人気エコノミストが実の子どもに教えたかった「お金」の話とは?
永濱利廣氏インタビュー「知識の差が出てくる時代に」
―著書「エコノミストの父が、子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話」では、とっつきにくさを覚えがちな経済について非常に平易に書いています。
「私自身、エコノミストになり、マクロ経済を専門的に論じる一方で、テレビなどメディアに出るようになったことが大きな転機となった。今まで自分では当然の前提と思っていた経済用語や概念について聞かれることが多くなったからだ。書いたところで関心を持ってもらえなければ意味がない。いかに分かりやすく伝えるかは常に意識している」
―ご自身も中学生と高校生の2人の子どもを持つ父親です。執筆に際しては意識しましたか。
「これまで子どもたちにお金についてあらたまって話してきたかと尋ねられると正直、話せていない。今回は子どもが社会に出る際に、これだけは知っておいてほしいと思ったことを書いた。執筆中に原稿を読んでもらい感想を聞いたこともあった。中学生の娘は学校で社会保障に関する課題がたまたま出ており、関心を持って読んでくれていた」
―アルバイトの時給から給料の仕組み、天引きされる税金や保険、年金など大人が今更聞きにくいことを知るのにも最適な一冊です。
「『若いし、年金をどうせもらえないから税金は払わない』と主張する若者もいるが、日本人の大半は生活していれば消費税を日々支払っている。従来の保険料だけでは足りないから消費税が導入されたわけであり、それでも足りないから3%から始まり、もうすぐ10%になろうとしている。『若いから関係ない』でなく、既に直面している問題として認識することで、社会保障に関する視点も変わってくるのではないだろうか」
―永濱さん自身、どのようにして「お金」について学びましたか。
「特に誰かに学んだわけではない。大学では理工学部で金融工学を専攻したくらいだから、その頃には既に興味を持っていたのは間違いない。実家が自営業で、親が投資をしていた関係もありサラリーマン家庭に比べれば『お金』は身近だったかもしれない」
―失敗もあったとか。
「大学進学で地方から出てきた時は、右も左も分からない。まず入試の時に会場近くで『結果が届かない可能性がある。お金を払えば合否の通知漏れをなくせる』とサービスを募っている業者がいて、周囲の人々がお金を払っているから私も払ってしまった。学生の時は電柱に貼ってあったアルバイトに時給の高さにひかれて、行ってみたら非常に怪しい内容で慌てて逃げ出したこともある。『お金』やビジネスの仕組みは知らないことで損をする時もある。本書でも触れているが、安いやタダには理由があるし、楽してお金が手に入る背景にも理由がある」
―日本では金融教育が進みません。
「子どもがお金に興味を持ったり、いろいろ言ったりすることは好ましくないと長い間されてきた。こうした文化がすぐに変わるかは分からない。ただ、お金と無縁では生きられないし、お金のせいでつまずいたり、人を不幸にしたりしないためにも知識は必要だ。お金について知っているか知らないかの差がこれまで以上に出てくる時代になるのではないだろうか」
(聞き手=栗下直也)
【略歴】
永濱利廣(ながはま・としひろ)第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。95年(平7)早大理工卒、同年第一生命保険入社。日本経済研究センターを経て00年より第一生命経済研究所、16年より現職。05年東大院経済学研究科修了。栃木県出身、45歳。『エコノミストの父が、子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』(ワニブックス)>
「私自身、エコノミストになり、マクロ経済を専門的に論じる一方で、テレビなどメディアに出るようになったことが大きな転機となった。今まで自分では当然の前提と思っていた経済用語や概念について聞かれることが多くなったからだ。書いたところで関心を持ってもらえなければ意味がない。いかに分かりやすく伝えるかは常に意識している」
―ご自身も中学生と高校生の2人の子どもを持つ父親です。執筆に際しては意識しましたか。
「これまで子どもたちにお金についてあらたまって話してきたかと尋ねられると正直、話せていない。今回は子どもが社会に出る際に、これだけは知っておいてほしいと思ったことを書いた。執筆中に原稿を読んでもらい感想を聞いたこともあった。中学生の娘は学校で社会保障に関する課題がたまたま出ており、関心を持って読んでくれていた」
―アルバイトの時給から給料の仕組み、天引きされる税金や保険、年金など大人が今更聞きにくいことを知るのにも最適な一冊です。
「『若いし、年金をどうせもらえないから税金は払わない』と主張する若者もいるが、日本人の大半は生活していれば消費税を日々支払っている。従来の保険料だけでは足りないから消費税が導入されたわけであり、それでも足りないから3%から始まり、もうすぐ10%になろうとしている。『若いから関係ない』でなく、既に直面している問題として認識することで、社会保障に関する視点も変わってくるのではないだろうか」
―永濱さん自身、どのようにして「お金」について学びましたか。
「特に誰かに学んだわけではない。大学では理工学部で金融工学を専攻したくらいだから、その頃には既に興味を持っていたのは間違いない。実家が自営業で、親が投資をしていた関係もありサラリーマン家庭に比べれば『お金』は身近だったかもしれない」
―失敗もあったとか。
「大学進学で地方から出てきた時は、右も左も分からない。まず入試の時に会場近くで『結果が届かない可能性がある。お金を払えば合否の通知漏れをなくせる』とサービスを募っている業者がいて、周囲の人々がお金を払っているから私も払ってしまった。学生の時は電柱に貼ってあったアルバイトに時給の高さにひかれて、行ってみたら非常に怪しい内容で慌てて逃げ出したこともある。『お金』やビジネスの仕組みは知らないことで損をする時もある。本書でも触れているが、安いやタダには理由があるし、楽してお金が手に入る背景にも理由がある」
―日本では金融教育が進みません。
「子どもがお金に興味を持ったり、いろいろ言ったりすることは好ましくないと長い間されてきた。こうした文化がすぐに変わるかは分からない。ただ、お金と無縁では生きられないし、お金のせいでつまずいたり、人を不幸にしたりしないためにも知識は必要だ。お金について知っているか知らないかの差がこれまで以上に出てくる時代になるのではないだろうか」
(聞き手=栗下直也)
永濱利廣(ながはま・としひろ)第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。95年(平7)早大理工卒、同年第一生命保険入社。日本経済研究センターを経て00年より第一生命経済研究所、16年より現職。05年東大院経済学研究科修了。栃木県出身、45歳。『エコノミストの父が、子どもたちにこれだけは教えておきたい大切なお金の話』(ワニブックス)>
日刊工業新聞2017年10月30日