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次世代ビジネスの目利き役、大手商社はベンチャー投資の担い手か!?

キャピタルゲインだけにとどまらず。炭素繊維など有望技術へ中長期の種まきも
次世代ビジネスの目利き役、大手商社はベンチャー投資の担い手か!?

三井物産が出資する微生物によるガス発酵技術開発の実証プラント


 **大学と連携、新たな制度設けて挑戦促す

 三井物産は15年4月、金沢工業大学と炭素繊維の量産化に向けた製造方法などの共同開発に乗り出した。金沢工大向けに製造設備の貸し出しや自動車メーカーなどからの参加を募り、炭素繊維を使った自動車部品などの新製法確立のための実証研究を展開。三井物産として研究機関と民間企業とのつなぎ役まで担うことで、炭素繊維の一層の普及と、日本メーカーの炭素繊維製品に関する技術力強化につなげる。

 同社が12年に始動した「イノベーション推進案件制度」の一つとして取り組む。同制度は、市場予測が難しいなどの不確実要因を持ちながらも、将来の収益貢献の期待や社会的に取り組む意義が大きな案件への参画を支援する。次世代ビジネスを創出し、事業領域の拡大を図る。

 制度として年間200億円の予算を設定。12年4月に設立したイノベーション推進室が管轄し、各営業本部と連携して年間100件程度の候補案件を発掘している。どの案件もキャッシュフローが描きにくく収益化にも時間を要することから、通常の投資案件とは“別物”として投資判断を下すほか、損益が赤字でも評価にマイナスを付けずに、むしろプラスを与えるという。これにより「仮に失敗しても新たな挑戦を促す」(中野行庸イノベーション推進室長)効果を期待する。

 また、同制度のさらなる案件発掘に向けた研究活動として14年に「Karugamo Works」を始動した。複数の営業本部から人員を集め、新交通システムや農水産など各テーマ別に10チームを結成。メンバーは業務時間の20%を担当業務以外に使えるため推進案件作りに集中でき、組織の垣根をなくして自由に考えることで「社内でオープンイノベーションを推進できる」(中野室長)効果も見込める。近々、投資決定される案件が出る予定だ。
 
 新規事業創出に向けた取り組みが徐々に活発化する一方、同制度の採用実績は金沢工大との炭素繊維やマレーシアのスマートシティー(次世代環境都市)開発、米国での微生物によるガス発酵技術開発など計5件にとどまる。中野室長は「変わることの難しさは当然あるが、継続して取り組むことが重要」として、引き続き次世代ビジネス創出に向けた活性化策を展開する構えだ。
(文=土井俊)
日刊工業新聞2015年06月22日 深層断面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
商社によってそれぞれ特色が出ていて面白い。今のベンチャー投資ブームを冷静な目で受け止め、商社にしかできないダイナミックな動きや仕掛けをして欲しい。

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