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AIがソムリエに!?メルシャンが消費者向け対話型サービス

膨大なナレッジを伴う商品とユーザーのマッチングで威力
AIがソムリエに!?メルシャンが消費者向け対話型サービス

店頭でワイン選びを悩む人は多い

 ワイン最大手のメルシャンは、人工知能(AI)を活用した消費者向けの対話型サービス「オフィシャルアシスタント おしえて!みのりさん!」を導入した。ワインを飲みたいが、どの商品が良いかよくわからないという消費者に対し、スマートフォンを通じた対話入力の中から好みを分析して、お勧め商品をアドバイスする。ワイン購入者の裾野を広げるのが狙いだ。

 不振が続くビール市場と対照的に、堅調なワイン市場。とはいえ消費量と“愛好家”数の多さは、ビールとは比較にならない。裏を返せばビールより、ワイン市場は成長の可能性が高いとも言える。

 「ワインはビールに比べブランド数がはるかに多く、多種多様」。今回のシステムを手がける親会社のキリン(東京都中野区)デジタルマーケティング部の寺田智伸主務は指摘する。「一番搾り」や「スーパードライ」など消費者が特定ブランドを選ぶ傾向が強いビールに対し、ワインはブランドを選ぶ比率が低い。同じ消費者が「先週はAワインを飲んだから今週はBワイン」などと、違うブランドを選ぶ。メーカーからみれば販売が難しい商品だ。

 ブランドで選ぶビールの場合、有名タレントを起用してテレビでイメージ広告を流し、前後して攻勢をかける例が中心。「ワインではこのやり方が通用しない。同じ商品を飲むより、あれこれ楽しもうと考える人が多い」(寺田主務)。

 消費者のその日の気分で変わる要求をいかに吸い上げ、商品選択のアドバイスへ結びつけるか。着目したのがAIと、対話型サービスだ。

 対話型サービスであれば「どんなワインを選んだらよいか、わからない」との漠然とした質問でも「飲みたいのは赤ワインですか、白ワインですか?」「予算はいくらぐらい?」という具合に追加質問することで、客の“言葉にはなかった要求”を知ることができる。

 初心者以外で、ある程度のマニアの質問にも対応できる。加えてAIが持つ学習機能だ。同一人物の質問なら、前回や前々回のやりとりを覚えているため、最初から的確なアドバイスができる。

 ワイン選びだけでなく「今週は寒くなってきましたよね。寒い夜にはこんな料理はいかが?」などの話や、「あのワインのこんなエピソード知ってました?」のような雑談めいた話もできるという。

 「ワイン選びなどの堅苦しい話題だけでなく、雑談のやりとりを通じてワインへの親しみを持ってもらえたら」(同)と話す。

 「ワインはボージョレヌーボーイベントやクリスマスパーティーの時だけに飲む、特別な酒」と考える消費者はまだ多い。「肉料理には赤ワインでないといけない」などの、心理的な壁を取り除くことが飲用人口と市場の拡大につながる。

 それにはサービス利用者が、多いほどよい。サービス利用前提の「ワインすき!」の会員登録は現在10万人だが、数万人規模でアップさせたい考えだ。
              

(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2017年10月30日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 ソムリエの皆さんは嫌がるだろうし、ソムリエと話したいワイン通の皆さんもあまり好まないかもしれないが、それでも今までなかったのが不思議なくらいのサービスやアプリ。最近ではモバイルアプリでラベル写真を撮って判定・シェアするものもあるが、要するにExpart SystemとCRMの組み合わせでマッチングをかければ良いだけの話なので、AI的には1990年代までの要素技術でイケる話。もちろんコンピューティングリソースと大量データあっての話なので実現が今となっているわけだ。  このような膨大なナレッジを伴う商品とユーザーニーズのマッチングはAI活用 (実際にはAIと言うほどでもないもの) の最たる領域。是非周りの商品を見回してほしい。多くの機会があるはずだ。

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