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JINS、渋谷のお店でロボットがメガネ作り

レンズ研削加工、ミスも少なく
JINS、渋谷のお店でロボットがメガネ作り

JINS渋谷店のレンズ加工ロボット。ロボットが加工している間、別の作業を行うことができるので非常に有効だという

 ロボットの活躍する領域が広がっている。これまでは自動車工場の溶接や塗装など特殊な作業に限られていたが、人手不足の課題解決といった需要の高まりや政府の後押しがあり、製造業全般やサービス業、中堅中小企業にまで普及し始めた。新たな領域に進出したロボットの活用現場に迫る。

渋谷で実証実験


  眼鏡販売店「JINS」で知られるジンズは、短時間で商品を提供できることで顧客満足度を上げている。レンズをフレームに合わせた大きさに研削加工する作業を店舗で行うことで加工時間を短縮する。加工は機械が行うが、治具の装着やレンズの取り出しなどは人が行うため、従業員に負担がかかっていた。5月末からレンズ加工の自動化に向けてロボットを導入し、実験を重ねている。

 「従業員はなるべく多くの時間を接客に割いた方が良い。加工する作業場から人を(売り場に)出したかった」。ロボット導入を担当した松浦亮介コミュニケーションユニットユニット長は狙いをこう話す。レンズ加工時間は長いと約20分で、従業員が機械に付きっきりになる。仮に1日10人分のレンズを加工すると3時間以上になり、自動化すればこの時間を接客などサービス品質の向上に使える。

 5月末に旗艦店としてオープンした渋谷店(東京都渋谷区)で実証実験に入った。松浦ユニット長は「ロボットのような新しいものを受け入れやすい企業風土で、上の理解もあった」と笑う。加工機メーカーやシステム構築業者に「こうしたい」という理想を説明。レンズ加工機と自動搬送装置などを組み合わせたシステムを構築した。実際に稼働すると問題は出てくるが、改善しながら軌道に乗せているという。

全工程にも挑戦


 加工の手順はこうだ。眼鏡購入客が選んだレンズを1000種以上の在庫から選び、フレームと一緒に専用トレーに置く。購入客の各種データは共有してあり、トレーをロボットに置くとレンズにカップと呼ぶ治具を自動装着する。フレームに応じて治具を付ける位置が微妙に違い、人手ではスキルが要る。次が研削加工。2台の加工機が稼働し一度に左右のレンズをフレームに合わせ削る。加工後に人がフレームにレンズをはめて完了する。人手だと治具の装着などでレンズの左右を取り違えるケースがあったが、ロボットではミスがなくなる効果もあった。

 ロボットを利用している渋谷店の松山晋店長は「レンズ加工自体は早いし良くできている」と及第点をつける。ただ、細かい点で課題はあると話す。まずロボットシステムが大きい。小型に改善することは可能のようで検討はしているという。次は加工時間で、いま眼鏡一つ分に5分かかるが半分にしてほしいという。レンズ選びやフレームへのはめ込みも自動化してもらいたいと要望は尽きない。
 
 ジンズとしても実際に全工程の自動化には挑戦する考えだ。渋谷店で課題をつぶし込み、徐々に自動化を進めていくという。
日刊工業新聞2017年10月11日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
学生時代、メガネ店でアルバイトをしていました。レンズの右左を間違える以外にも、加工ミスでレンズを傷つけてしまい、そのレンズの在庫がなかったりすると当日にメガネを受け渡せないことなどもありました。

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