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フィンテックがある1日、あなたは寝る前に何をする?

「FinTechビジョン」の中にある生活
フィンテックがある1日、あなたは寝る前に何をする?

(写真はフィリップス・レスピロニクス)

 フィンテックが普及すると、何がどう変わるのだろうか。20年あまり前にインターネットが、10年前にスマートフォンが、私たちの生活をこれほど変えてしまうとは誰にも想像できなかった。フィンテックのある生活を予想するのもやはり難しい。それでも、すでに存在していたり、実現間近だったりするサービスから、ある程度の想像図は描けるだろう。経済産業省がまとめた「FinTechビジョン」の中にある、“フィンテックな生活”を、ここに紹介する。

【7:00 起床】
【7:10 1日のスケジュールの確認】

 スマホでカレンダーを参照したら、今日の昼は表参道にいるというスケジュールをもとに、いくつかランチ・クーポンが表示されてきた。クーポンを選んで時間、人数を記入するだけで限定ランチの予約完了。

【7:15 朝刊を読みながら朝食】
 どうやら昨日のアメリカ市場では株価が大きく下落しており、今日の日本市場は大きく荒れた展開になりそうだ。
 株式投資をしているので、昔は仕事をしながらマーケットの動きを気にしていたが、今は【ロボ・アドバイザー】によって多様な金融商品の値動きを人工知能でチェックして最適投資がなされるので、安心して仕事に専念できる。
【ロボ・アドバイザー】


【7:30 身支度】
【7:45 家を出る】
【7:50 コンビニで軽食を調達】

 出勤途中、いつも立ち寄るコンビニの前でスマホが反応。「いつも購入されているミックス・サンドイッチはいかがでしょうか。本日は20円引きのクーポン付き」。

 事前に購買履歴や位置情報などを含むマイ・データをコンビニに提供していたので、自分のツボを分かった提案をしてくれる【電子レシート】。

 コンビニでサンドイッチを購入するために、レジにスマホの QR コードをかざしたら、【家計簿アプリ】が起動して、一元管理しているポイントカードから使えるものを選び出し、自動で特典割引が受けられた。
 電車に乗っている間に、家計簿にサンドイッチ購入の記録がフィードされてくる【家計簿アプリ、API 連携】。
【家計簿アプリ】


《通勤 電車の中》
 出勤途中、登録している企業に関する重要な情報がアプリに送られてきた。朝刊には掲載されていなかった情報もリアルタイムに更新されるので、通勤中も安心して読書ができる【金融情報配信アプリ】。

【8:50 始業】
 そういえば今日は月末、経費精算が必要な日だ。経費はすでに【クラウド会計ソフト】が承認待ちのものを用意してくれている。

【10:30 経費精算を確認】
 領収書も【電子レシート】が転送されていて、税務申告もそれで OK なので、いくつか取引先情報を確認して、登録完了。
 あとは在宅ワークしている経理担当者が送金対応してくれるはず。庶務的な仕事は朝イチ10分で終了。
 いちいちマニュアルを読むことも、経理担当者から怒られることもなくなった。
【クラウド会計ソフト/電子レシート】


【12:00 昼食】
 ランチを食べて店を出ると、登録してあるクレジットカードから代金が自動で引き落とされる。最近はレジでお財布を出すこともないので持ち歩いていない。なくす心配もないし、【キャッシュレス】は快適。

【13:00 午後】
 5ヶ月前にオンライン・レンダーから短期融資を受けた。先月から事業が軌道に乗り、売上が伸び資金繰りもかなり改善した。

 先ほど、直近の財務情報をクラウド会計システムで更新すると、自動的にオンライン・レンダーへ送信されており、昼過ぎには今日から以前よりも低い金利が適用されるとの通知が届いた【トランザクション・レンディング】。
【トランザクション・レンディング】


【15:00 売り上げ代金の受領確認】
 今日は輸出した商品の代金受領日。【ブロックチェーン】経由で行うので、海外送金手数料が非常に低い。また受取銀行・支払銀行・支払人・受取人の間で送金ステータスがリアルタイムでモニタリングできるので、いちいち現状を取引銀行に電話で確認する必要もなくなった。

【16:00 会社の状況確認】
 昔は月末に締めてみないと我が社に資金がいくらあるのか分からなかったが、今は日々の情報(在庫・財務)が見える化されており、現時点での状況が全て分かるようになった。

 金融機関にこの情報を送ると、すぐに金利がいくらでどれだけ融資可能かを教えてもらえるので、経営層にも資金調達の規模と可否について即時に伝えることができるようになった。

【17:15 終業】
【18:00 飲み会】

 同期たちと飲み会に。
 お店は【QR コード決済】が可能なので、幹事の私がクレジットカードで立て替えた。その場でチェックインしていたメンバーにワリカン額が自動で計算されてメッセージ送信。OK を押しただけで、精算が完了【割勘アプリ、API 連携】。
【QRコード決済】

【割勘アプリ、API連携】


【20:30 帰り道に買い物】
 会社の帰り道、スーパーに寄ったが買おうとしていたものが思い出せない。これまでの購買履歴をインプットしたアプリをチェックしてみる。過去の買物の傾向から、そろそろティッシュ・ペーパーと洗剤が切れるらしい。確かに両方とも買おうと思っていたことを思い出した【電子レシート】。

【21:00 家に着く】
【23:00 余暇(最近の振り返り)】

 最近忙しい。ストレスを解消するため、甘い物ばかり食べているためか、身体もだるい。試しに発病リスク管理アプリに【電子レシート】で蓄積した購買履歴データと、【ウェアラブル端末】で記録した歩行距離データと睡眠時間データをインプットしてみた。結果は発病リスクA-。このままでは、来年は保険会社から健康割引を受けられなくなってしまう。すこし生活習慣を見直そう。

 保険といえば、最近安全運転を心がけていたので、スマホと連動するデバイスが保険会社に送信した運転データから安全運転ドライバーと認定してもらえた。次回の自動車保険の更新から保険料の割引が受けられるようだ【テレマティクス保険】。
【テレマティクス保険】

 しっかり給与をもらっているはずが、なぜか月末には底をついてしまう。ここは資産管理アプリを作動させよう。貯金目標から1日当たり使えるお金を項目ごとに割り出し、【電子レシート】を読み込んで管理してくれる。つい、高価なアクセサリーをレジに持っていっても、予算オーバーならば、スマホでの決済が実行できなくなるので安心だ。
【0:00 就寝】
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
WiL共同創業者兼CEOの伊佐山元さんは日本におけるフィンテックでこうなってほしい方向性について金融リテラシーの向上をあげる。  「日本では源泉徴収され、大半の会社員は確定申告とも無縁。お金がお金を生むということを忌み嫌う社会ということもあり、投資に対する意識が弱い。一方で欧米では確定申告を個人で行うため、どう節税し、資産を増やすためにどう運用すれば良いかを自然と考えなければならない社会だ。もちろん働いて稼ぐ重要性は否定しないが、欧米では投資のスキルも無いと良い生活はできない」(伊佐山氏)

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