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日立・中西会長インタビュー「常に壊していかないとダメなんだ」

日立・中西会長インタビュー「常に壊していかないとダメなんだ」

「顧客体験をどう創るかが競争軸」(中西会長)


若い人に大きい仕事をやらせて欲しい


 ー中西さんは大きな仕事をしたいと思って日立に入社したとおっしゃっています。最近の若い人たちはそういうモチベーションを持っているように見えますか。
 「10年くらい前は、すごく内向き志向だと感じた時期もありましたが、最近は意欲の高い人が多いですよ、特に女性は。でも、入社した時に指導する人が、スキルばかりを教えると良くないと思っていて、若い人にこそ、大きい仕事をやらせて欲しい。そのほうが面白いんだよ。僕が最初に配属された大みか工場(茨城県日立市、現大みか事業所)は、伝統ある日立工場(同、現日立事業所)などからあぶれた人を集めてできたようなものだから(笑)、反骨というか自由にやらないと生きていけなかった。上司がなんといおうと、声を大にして、お客さんがこう言ってますから、と言えば通ってしまう雰囲気もあって。でも最近の大みか事業所は、IoTの主力拠点なのにエスタブリッシュになり過ぎているので発破をかけています。常に壊していかないとダメなんだよね」
経理のメカニズムから変えよう

 ーGEは2011年くらいからデジタル革命に向け企業カルチャーの変革に大きく踏み込みました。それでも最近はなかなか株価が上がらずジェフ・イメルトCEOの退任が発表されました。従来の損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)は、モノの生産や移動する数字が中心です。コネクティブな社会では企業価値を測る尺度も変わってくるのでは。

 「GEは米国企業だけあって、お金や人の動かし方も早い。ただ、イメルトさんともよく話しますが、ソフトウエアカンパニーになれているかと言えば、まだまだだと言っている。製品やサービスがコモディティ(汎用)化する時間軸は格段に早くなっていて、そうなると内部評価の前提も違ってくるよね。デジタルエコノミー時代の企業をしっかりと測る手段は、まだ確立されていない。昔は設備投資して、その回収期間が何年と計画し、実際にその通りになったかどうかを各拠点ごとのPL、BSがあれば一通り管理できた。しかしビジネス形態が変わっている状況では、同じやり方ではCFO(最高財務責任者)も儲かるのか、儲からないのか分からないから困るよね。経理のメカニズムを変えないと管理ができないので、日立も取り組んでいるところです」

日本は課題解決パートナーになれる
 ー日立は日本でコネクテッドインダストリーズのフロントランナーという意識や手応えはどの程度ありますか。
 「デジタライゼーションもロボティクスもAI(人工知能)もツールであって、それらのツールを有効的に社会課題の解決に使いましょうというのが政府が掲げる『ソサエティ5・0』というコンセプト。安倍さん(安倍晋三首相)も国際会議の場でアピールしていますが、日本は先進国でも発展途上国でも、一緒に課題を解決することができるパートナーになれる大きな可能性を持っている。日立もいろいろ試行錯誤しながら手を打ってきて、そのフィードバックを待っているところですね」

日刊工業新聞2017年10月4日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
6月に「METI Journal」で公開した中西さんのインタビューを全文掲載します。

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