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ギンザシックス、伏見稲荷の地価はバブルなのか?

「過熱しているがバブルとはいえない」 投資対象の用途・地域が拡大
ギンザシックス、伏見稲荷の地価はバブルなのか?

観光客でにぎわう伏見稲荷大社

 国土交通省が19日公表した2017年7月1日時点の基準地価(都道府県地価調査)によると、全国の商業地の地価は10年ぶりに上昇へと転じた。訪日外国人客の増加による店舗やホテルの需要の高まりに加え、歴史的低金利が活発な不動産取引を後押しした。最高価格をつけた東京都中央区銀座2丁目の「明治屋銀座ビル」の地価は1平方メートル当たり3890万円。90―91年のバブル期を超え、75年の調査開始以来最高となった。内外から多くの観光客を引きつける京都でも地価上昇が顕著になっている。

 バブル期を超える国内最高の地価をつけた銀座では近年再開発が進み、中央通りには高級ブランドの旗艦店が並ぶ。16年には東急プラザ銀座、銀座プレイスと複合商業施設がオープンし、訪日外国人客を中心に集客力を高めている。

 そんな銀座の新たなランドマークが、J・フロントリテイリングや森ビルなど4社が松坂屋銀座店跡地などで4月開業した「GINZA SIX(ギンザシックス)」。

 オフィスや能楽堂も入居、街に新たなにぎわいを生み出している。開業から5カ月たったギンザシックスの手応えについて、J・フロントリテイリングの山本良一社長は「好調に推移している」と話す。
女性からの人気が高いギンザシックス

 こうした商業施設は高級志向の施設だけではない。プランタン銀座は17年3月に「マロニエゲート銀座」ブランドで再出発。20―40代の女性をターゲットに、SNSへの投稿などを意識した店作りを志向している。ドラッグストアのマツモトキヨシホールディングスは6月、働く女性向けの新業態店を設けた。

 再開発や店舗改装による高いブランド力を背景に、訪日外国人も多く訪れ、買い物を楽しんでいる。最近では消費需要に加えて宿泊需要も取り込もうと、良品計画や森トラスト、名鉄イン(名古屋市中村区)などが相次いでホテルの建設計画を打ち出している。

訪日外国人客が上昇後押し


 基準地価(商業地)上昇率29・6%で全国1位となったのは、伏見稲荷大社(京都市伏見区)に近いJR稲荷駅前の通り。「お稲荷さん」の総本宮として有名な人気観光地だ。近年は特に訪日外国人客の増加が顕著で、年間を通じた活況が地価上昇を後押ししている。

 JR稲荷駅の改札を出ると、すぐに朱塗りの鳥居が目に飛び込む。早速、観光客がスマートフォンやカメラを構える。境内に入っても日本人や外国人を問わず、本殿の背後にある稲荷山に林立する千本鳥居をバックに撮影する風景が見られる。

 こうした写真や口コミが会員制交流サイト(SNS)などを通じて拡散しているのも、同地が注目される一因だ。JR京都駅から2駅目、京阪電鉄も並行するなどアクセスも良い。

 JR稲荷駅前の通りに構える茶店の店員は「平日は訪日外国人客が多いが、休日には日本人も多くなる。駅前通りは自動車の通行が難しくなるほどだ」と話す。これから修学旅行生も加わり、紅葉シーズンを控えて観光客のにぎわいは続く。

 京都市の外国人宿泊客数は16年に過去最高の年間318万人を突破し、ここ数年で3倍に急増。伏見稲荷大社には京都観光の外国人の約4割が訪れ、訪問地トップ5に入る。
                     

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日刊工業新聞2017年9月20日の記事から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
米系不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)の赤城威志リサーチ事業部長は足元の不動産取引市場を「過熱しているがバブルとはいえない」と分析する。JLLの調査による不動産投資の用途別割合を見ると、伝統的な主要投資セクターであるオフィスの割合が低下し、物流施設やホテルの割合が増えている。不動産市場の過熱により東京都心でのオフィスビルへの投資が難しくなった結果、投資対象が用途・地域的にも拡大。地価上昇に広がりをもたらしている。今回の基準地価で商業地が上昇した都道府県数は前年に比べ2県増え、17都府県となった。

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