塩を活用し電力を蓄えるグーグルのプロジェクトが注目されるワケ
風力利用する“蓄熱の”実証加速
再生可能エネルギーは発電量が天候に左右され、不安定なのが課題。いかに電力を蓄積するか多くの企業が研究開発を急ぐ中、発電した電力を熱として蓄える蓄熱技術が注目を集めている。主流の蓄電池に比べて安価で技術的にも成熟しており、再エネ普及の加速にもつながる。
塩を活用して電力を蓄える―米グーグルの親会社であるアルファベットのプロジェクトが今夏、エネルギー業界の話題をさらった。開発するのは高熱の塩と不凍液を利用したタービン発電システム。2種類のタンクを設置し、一方に塩、もう一方に不凍液を満たす。
太陽光、風力などの再生可能エネルギー源から生み出された電力でヒートポンプを動かし、高温の空気と冷気を作り出す。高温空気で塩を加熱し液体にし、冷気は不凍液を冷やす。電力を取り出す必要が生じると、ヒートポンプを逆に作動させ、両者の温度差を利用して強い空気の流れを発生させ、タービンを駆動して発電する。
日本でも蓄熱発電の研究は進む。「熱機械は蓄電池に比べ発電効率が低いとの指摘が多い。だが、蓄熱コストは電池の20分の1であり設備コストなどトータルで考えれば、発電効率の低さを踏まえても圧倒的に安い」。エネルギー総合工学研究所(IAE)の岡崎徹研究員はメリットを説く。
IAEでは風力を利用して熱をため、後で電気に変換する「風力熱発電」の実証試験を目指す。風車内部に大型の磁石を用いた発熱器を搭載し、風車の回転エネルギーを利用する。
発生した熱で「溶融塩」という媒体を循環させ、熱を地下タンクに蓄える。電力が必要な際に熱で蒸気をつくり、蒸気タービンを回してエネルギーを取り出す。複数の大手企業と実証研究を検討しており、2017年度内にも試験プラントの建設を決めたい意向だ。
とはいえ、安穏とはしていられない。風力熱発電で先行するのは独シーメンスだ。昨年に研究概要を発表し、今秋に独ハンブルク工科大学や磁場の電力会社と実証設備の建設に乗り出す。岡崎研究員も「シーメンスの発表後に急に注目されるようになった」と語る。
これまでの再生可能エネルギーの蓄エネの主流は蓄電池。米テスラモーターズはハワイのカウアイ島で大量のリチウムイオンバッテリーを使って、電力を太陽光だけで賄えるシステムを導入した。ただ、リチウムイオン電池は価格は下落傾向にあるが限界が見え隠れしており、ランニングコストの課題は解消されないままだ。
蓄熱発電は、蓄電池に比べ、トータルコストが安く、真新しい技術や特別な材料も不要だ。今後、再エネ普及が見込まれる新興国で欠かせない技術に化ける可能性も秘めている。
(文=栗下直也)
塩を活用して電力を蓄える―米グーグルの親会社であるアルファベットのプロジェクトが今夏、エネルギー業界の話題をさらった。開発するのは高熱の塩と不凍液を利用したタービン発電システム。2種類のタンクを設置し、一方に塩、もう一方に不凍液を満たす。
太陽光、風力などの再生可能エネルギー源から生み出された電力でヒートポンプを動かし、高温の空気と冷気を作り出す。高温空気で塩を加熱し液体にし、冷気は不凍液を冷やす。電力を取り出す必要が生じると、ヒートポンプを逆に作動させ、両者の温度差を利用して強い空気の流れを発生させ、タービンを駆動して発電する。
日本でも蓄熱発電の研究は進む。「熱機械は蓄電池に比べ発電効率が低いとの指摘が多い。だが、蓄熱コストは電池の20分の1であり設備コストなどトータルで考えれば、発電効率の低さを踏まえても圧倒的に安い」。エネルギー総合工学研究所(IAE)の岡崎徹研究員はメリットを説く。
IAEでは風力を利用して熱をため、後で電気に変換する「風力熱発電」の実証試験を目指す。風車内部に大型の磁石を用いた発熱器を搭載し、風車の回転エネルギーを利用する。
発生した熱で「溶融塩」という媒体を循環させ、熱を地下タンクに蓄える。電力が必要な際に熱で蒸気をつくり、蒸気タービンを回してエネルギーを取り出す。複数の大手企業と実証研究を検討しており、2017年度内にも試験プラントの建設を決めたい意向だ。
とはいえ、安穏とはしていられない。風力熱発電で先行するのは独シーメンスだ。昨年に研究概要を発表し、今秋に独ハンブルク工科大学や磁場の電力会社と実証設備の建設に乗り出す。岡崎研究員も「シーメンスの発表後に急に注目されるようになった」と語る。
これまでの再生可能エネルギーの蓄エネの主流は蓄電池。米テスラモーターズはハワイのカウアイ島で大量のリチウムイオンバッテリーを使って、電力を太陽光だけで賄えるシステムを導入した。ただ、リチウムイオン電池は価格は下落傾向にあるが限界が見え隠れしており、ランニングコストの課題は解消されないままだ。
蓄熱発電は、蓄電池に比べ、トータルコストが安く、真新しい技術や特別な材料も不要だ。今後、再エネ普及が見込まれる新興国で欠かせない技術に化ける可能性も秘めている。
(文=栗下直也)
日刊工業新聞2017年9月15日