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楽天vsテラドローン、ドローン管制で争う2社の覇権戦略

自社のUTMを訴求し活用の場を広げる
楽天vsテラドローン、ドローン管制で争う2社の覇権戦略

今後、利用が広がると安全飛行を司るUTMの重要性が増す(セキュアドローン協議会提供)

 近い将来、飛行ロボット(ドローン)が飛び交う社会が訪れる。その環境の実現に向け、空の安全を担う運航管理システム(UTM)の覇権争いが始まろうとしている。特に楽天とドローンベンチャーのテラドローン(東京都渋谷区)は、ドローン先進国である欧米の企業と連携し先行する。それぞれ合弁会社や資本提携を通じて知見を取り込んでおり、競争の主役になりそうだ。両社は互いに異なる方法で、自社のUTMを訴求し活用の場を広げようとしている。

 「ドローンの安全飛行に必須の情報を最適な形で提供する。地図や気象など精度の高い情報の提供が自社のUTMの利用を促す競争力になる」。楽天傘下の楽天AirMap(東京都世田谷区)の向井秀明最高経営責任者(CEO)は力を込める。

 楽天AirMapは8月、ドローンメーカーやアプリケーション(応用ソフト)開発者向けにUTM事業を始めた。飛行禁止区域や気象、地図などの情報を取得したり、飛行計画を作成したりする機能について応用プログラムインターフェース(API)を介して提供している。ドローンを使った多様なサービス開発を後方支援する。

 一方、テラドローンは16年11月にUTM事業を始めた。UTM単体の販売に加え、それを活用したドローンサービスとの一体提供も重視し、土木測量などのサービスを展開している。「ドローンの利用を促進する上でサービスとの一体提供は重要だ」(UTM事業担当者)と強調する。その上で「(物流などドローン活用が想定される)現場でビジネスモデルを構築するため、各分野のリーディング企業とパートナーを組んで実証していく」(同)と意気込む。

 さらに同社はKDDIと共同で「4GLTE」の通信網を活用した自律飛行を可能にするUTMを構築。ドローンの広域飛行が必要な物流サービスなどの提供に向けた体制を整えている。

 一方、楽天AirMapはパートナー戦略によるドローンサービスの開発は行わない方針。その理由について同社の向井CEOは「将来は同じ分野のドローンサービスが多くの企業から出てきて競争が生まれると思う。

 それらすべてとパートナーを組むのは非現実的。UTM単独で必要な情報を各社に提供する関係が(UTMの利用を拡大する上で)良いと考えている。我々はUTMで提供する地図や気象などの情報の精度向上に注力する」と説明する。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2017年9月15日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
多くのドローンが空を飛び交い、UTMがその安全を守る重要なインフラとして機能するのは20年以降と見込まれる。自治体などの空域管理者とドローン利用者が飛行の申請や承認をやりとりする基盤になる。ただ、UTM事業の覇権を握る上で、その時までに利用者をどれだけ増やせるかは重要だろう。その施策として積極的なパートナー戦略が成功するのか、もしくは単独提供による全方位戦略が勝利するのか、注目される。 (日刊工業新聞第一産業部・葭本隆太)

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