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経産省が打ち出した人材育成政策。IoT時代に求められる能力とは?

官民ともにまだ明確な姿は見えず
 次世代産業人材の育成に向けた動きが活発化している。政府は6月に閣議決定した「未来投資戦略」で人材育成を分野横断的な課題に設定。これを受け産業政策を担う経済産業省は、2018年度に人材育成策を拡充する方針を打ち出した。モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)が引き起こす第4次産業革命により、求められる人材像は変わりつつある。

 「今までの産業人材育成では変化に対応できない」。経産省のある幹部は危機感をにじませる。同省はこれまで、突出したIT起業家を育てる「未踏事業」や中小企業向けの若手育成支援など、さまざまな人材政策を通じ産業界を後押ししてきた。

 だがIoTやAIの技術革新によって、産業や社会を取り巻く環境は急速に変化している。例えば、情報の安全を確保するサイバーセキュリティー対策は、企業にとって“待ったなし”だ。「これからのIoT時代は新たなタイプの人材が求められる」と、この幹部は続ける。サイバーセキュリティーとモノづくりの知識を兼ね備えるなど総合的な能力が必要になる。

 経産省の危機感は、18年度予算概算要求に表れた。「多様な人材の育成」をテーマに、関連政策で17年度比約3割増の計99億円を要求。新制度の創設や既存事業の拡充を盛り込んだ。

 目玉は来春始動予定の「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」だ。大学や民間事業者の職業訓練講座を経産相が認定し“お墨付き”とする。

 対象はサイバーセキュリティーやAIのほか、クラウド、データ分析、自動車の新たな開発手法「モデルベース開発(MBD)」など幅広い。世耕弘成経産相は「第4次産業革命に向けた人材育成・教育にしっかり取り組んでいく」とし、同制度を重要政策に位置付ける。さらに、デジタルモノづくり人材の育成を促す新事業など若手育成や中堅・ベテランの学び直しを促すべく、アクセルを踏む。

 産業のトレンドはさらに大きく変化していく。どんな人材を育てなければならないか、官民ともにまだ明確な姿はまだ見えていないのが実情だ。

 人材育成の機運は高まるものの、どんな教育を重視するかという難問が立ちはだかっている。
 
日刊工業新聞2017年9月14日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
ITSS(ITスキルスタンダード)の一大見直しも始まっており、そちらにも関与しているが、様々なものごとがつながる時代には、スキルや能力も繋がらなければならず、技術者もサイロ型の専門性だけではいられなくなっている。AIの使い方がまだ見えていない現時点でAIを駆使する能力も定義しにくく、しばらくは基本と応用を定義しつつも目指すレベルを数年ごとにローリングするモデルを取らざるを得ないだろう。標準化でコモディティを目指すのではなく、各産業と混ざり合った複合度の高い人材に必要な要件を体系的に落とし込むことはもちろん、それに対してITと産業とが混ざる人的交流も通じて総合的な能力を醸成する"環境"もまた必要になるだろう。

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