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ノーベル賞候補が語るがん免疫療法とオプジーボの未来

本庶京都大学特別教授「抗生物質ならペニシリンが発見された黎明期」
ノーベル賞候補が語るがん免疫療法とオプジーボの未来

小野薬品工業のがん免疫治療薬「オプジーボ」

 小野薬品工業の「オプジーボ」開発のきっかけは、免疫のブレーキとなるたんぱく質「PD―1」の発見だ。PD―1の働きを阻害して、がんに対する免疫反応を引き出す。PD―1の発見者である京都大学の本庶佑特別教授に、がん免疫療法の可能性を聞いた。

 ―がん免疫療法の現状認識は。
 「がん免疫療法の歴史は始まったばかりで、抗生物質に例えるとペニシリンが発見された黎明(れいめい)期にあたる。米国のがん研究は現在4分の3の成果が免疫関連なのに対し、日本はまだ4分の1。その研究は周回遅れになっている」

 ―課題は。
 「がん治療の現場に免疫の知識がある人材は少ない。従来の抗がん剤とは全く仕組みが違うという認識が必要。半年―1年は免疫が保てるため、効果が出たら投与を中断するべきだ。投与しすぎると、逆に免疫を弱めてしまうこともある」

 ―オプジーボの可能性をどう見ますか。
 「(がんに対する)有効性をもっと高める必要がある。私はリンパ球内のミトコンドリアを活性化することで、治療効果が上がるとみている。それを確認する臨床研究フェーズ1も年内に始める。事前に効果があるかを確認できる、バイオマーカーの発見も必要だ」

 ―がん治療などで革新的な研究成果が生まれるのに必要な事は。
 「革新的な成果は想定外のことから生まれる。それは基礎研究からスタートしているから、起こることだ。政府も企業も研究の選択と集中を重視するが、何に集中するのが適切なのか、分からないのが現実ではないか」

 「また、研究シーズに対する尊敬と還元が必要だ。私は大学と企業のウイン―ウインのポジティブなサイクルを作りたい。オプジーボ関連の還元に関してはまだ合意できていないが、リターンがあればファンドを作り、若手研究者が自由に研究できる資金の使い方のモデルを作りたい」
京都大学特別教授・本庶佑氏

【用語解説/がん免疫治療とは】
 がん治療において外科手術、抗がん剤治療、放射線治療に続く第4の治療法といわれる。がん免疫治療薬は体内に備わる免疫細胞を活用する。まずがん細胞が免疫細胞にかけたブレーキを解除。それにより活性化した免疫細胞が、がん細胞を攻撃する仕組み。
日刊工業新聞2017年8月23日の記事から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 本庶氏は毎年のようにノーベル賞受賞者候補に名前が挙がる。小野薬品の経営が行き詰まり、オプジーボの開発・改良がストップすれば、救えるかもしれなかった多くの命が失われるかもしれない。現状でも海外の大手製薬会社が続々とオプジーボの競合に名乗りを上げてきており、せっかくの日本企業の競争優位が消える可能性もある。本庶氏のような専門家の意見が入れられず、政府が薬価引き下げに踏み切ったことは正しかったのだろうか。この件に限らず、専門家の見解が軽視される風潮は決して良い結果をもたらさないのではないか。

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