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海外工場の生き残り策。円安=国内回帰で自立に動く

神鋼EN&Mのベトナム加工拠点からのレポート。独自の営業部門を作り自国の仕事が急増
海外工場の生き残り策。円安=国内回帰で自立に動く

技術力や日本と同等の品質管理・納期管理手法などを生かして、現地で案件獲得の拠点としての役割を強めている


 現地化を急ぐ背景にはKEVを取り巻く環境の変化もある。日本国内向けの案件が近年減少傾向にあり、最近の円安進行で日本向けの加工拠点としてのコスト競争力は相対的に落ちている。

 一方で、ベトナム国内での加工需要は増加の一途だ。日系企業をはじめとする多くの製造業が現地に進出。また中国の製造業の人件費高騰が続く中、「チャイナプラスワン」としてアジア拠点への期待も高い。「品質やコストなどの問題で、中国の製造拠点を活用していた企業が、(中国外の)アジアに製造拠点を移したいという動きが本格的になっている」(鈴木社長)。

 営業活動も奏功しており、売上高に占める自前の営業比率も上昇している。独自の営業活動を開始する以前は親会社経由の案件が大半だったが、14年度は自前の案件比率が親会社からの案件比率を上回っている。現地での食品や化粧品、医薬品向けなどの案件に加え、アジア域内での製鉄関連設備や海水淡水化プラント向け設備の受注にも触手を伸ばしている。

 もともと、日本企業が共同出資する生産拠点として98年に操業を始めたKEVは、05年に神鋼EN&Mの傘下となり10年となる。自ら稼げる拠点として挑戦が始まった。
日刊工業新聞2015年06月17日 モノづくり面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
 KEVの操業開始は98年。素材関連企業のベトナム進出事例としては歴史があるほうだ。その分、現地で稼ぐための「下地」を作り上げてきた。最近の円安で日本企業の業績回復が続いているが、逸るように整備されてきた海外現地法人にとっては、“親離れ”が今後の焦点となるかもしれない。

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