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IoT、AIの超絶スペシャリストを育成。DMG森精機の意気込み

 DMG森精機はIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)などの専門知識を習得する研究者育成制度を始めた。社員を大学院や有識者のもとに派遣し、2年かけて先端分野6科目を研究させる。工作機械メーカーの同社はIoT、AIなどが今後の製造業で重要な役割を果たすと判断。製品開発にはこれらを横断的に研究した「スペシャリストの育成が必要」(森雅彦DMG森精機社長)だとみて、制度を創設した。
開所式で森社長(写真右)とセンター長、研究員ら

 初年度は、約50人の中から6人を選んだ。ほぼ全員が修士、英語能力テスト(TOEIC)満点レベルの開発者という。2年間にわたりIoT,AI、ネットワーク、クラウド、ブロックチェーン、英語の6科目の研究に専念する。毎年35歳くらいまでの社員を対象に募集する。

 7月24日に行った同制度の拠点「先端技術研究センター」(東京都江東区)の開所イベントで、松島克守センター長(東京大学名誉教授)は、自動車がエンジン車から電気自動車(EV)に、流通業界が店頭販売からインターネット販売に移り変わっていることを例に、変化対応の重要性などを強調。こうした変革期に「異次元の顧客価値を創造する人材を育てたい」と意気込んだ。

DMG国内生産体制を大改革。加工機の4割を協力会社へ


 DMG森精機は日本での工作機械の生産体制を再構築する。2018年に協力会社との分業体制を整える。伊賀事業所(三重県伊賀市)での加工は基本性能を高める仕上げや技術蓄積の多い部品に特化し、粗加工などを10社に委託。伊賀事業所の加工機の4割を協力先に移設する。人員は技術営業や制御開発、保守サービスに振り向ける。19年までに2工場と部品倉庫を伊賀事業所内に新設し、周辺装置を含めた生産システムの販売と保守を強化する。
<サービスやソフト開発に重点、2025年にAIパーツセンターも>
日刊工業新2017年7月25日掲載記事を一部加筆修正
六笠友和
六笠友和 Mukasa Tomokazu 編集局経済部 編集委員
 「6科目すべてが頭に入った人材がいる会社は、多分ない」(松島センター長)と、工作機械業界のみならず、広く産業界全体を見渡しても珍しい取り組みでしょう。松島センター長が見つめているのは「インダストリー4・0」の先にある〃インダストリー5・0〃の世界です。「『4・0』なら、こんな教育は要らない」(同)と言い、同制度で育てた人材で『5・0』を創る考えです。これまでたびたび書いてきたように(「DMG森精機、国内生産体制を大改革。加工機の4割を協力会社に出す狙い」)製造業の変化に敏感で、さらに新しい付加価値づくりに積極的なDMG森精機ならではの取り組みです。

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