東芝メモリ売却、WD抜きの日米連合が軸に

関係修復のタイミングも探る

 半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐる東芝と協業先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立は、両社の合弁会社の持ち分の売却(移転)に関する見解の相違が焦点だ。相手の同意なしに第三者に売却できないとするWDに対し、東芝は「支配権の変更」による移転に同意は不要との立場。東芝は不信感を募らせており、売却交渉はWD抜きの日米連合を軸に進行する公算が大きくなってきた。

 東芝メモリの売却先を決める入札ではWDのほか、米ブロードコムや台湾・鴻海精密工業、韓国SKハイニックスが候補に残っている。2次入札からは産業革新機構や日本政策投資銀行、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日米連合が参加を目指す。

 4月末時点では、WDが矛を収めるよう、この日米連合にWDも呼び込み、入札手続きを円滑化する案が浮上していた。しかしスティーブ・ミリガンWD最高経営責任者(CEO)が一部メディアとのインタビューで「(東芝メモリの)実質的な主導権がほしい」と発言したことなどで、状況が変わった。

 東芝は債務超過から脱するため17年度中に東芝メモリを売却する必要がある。WDの出資比率が高まれば、独占禁止法の審査に時間がかかる。東芝の時間的弱みを意識したともとれるミリガンCEOの発言に東芝幹部は態度を硬化させており、「独禁法をできるだけスムーズにクリアするためにも、(同業である)WDからの出資は避けたい」と話す。

 入札手続きでは革新機構、政投銀、KKRの日米連合の存在感が増している。今後の焦点は、ここに日本の事業会社の出資が加わるかどうか。水面下では経済産業省が主導し、奉加帳方式で出資を募っており、富士通などが出資に前向きという。2兆円規模とされる買収資金を捻出できるか注目される。

 一方、WDの抗議により、入札手続きには遅れが生じている。東芝メモリを期限内に売却できない可能性が高まれば、東芝を支える銀行の姿勢も変わりかねない。WDの攻撃に対し、反撃を繰り出した東芝。これを契機に事態を好転できなければ、東芝メモリ売却をテコにした再建策が根底から揺らぎかねない。
                   

日刊工業新聞2017年5月12日「深層断面」から抜粋

後藤 信之

後藤 信之
05月12日
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WDと距離を置き始めた東芝。しかし業界では「今後の東芝メモリの売却にWDが全く絡んでこないというのは考えにくい」との声も根強い。売却に絡んでくるかはどうかは別にしても、両社はメモリー事業のパートナーであり、どこかのタイミングで関係修復を探る局面に入るはず。が、それまでに、もう1発2発パンチの応酬がありそうな雰囲気だ。

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