パルコにみる「ショールーミング」との上手な向き合い方

スタッフが商品情報を投稿し来店促す。アプリもテナントの売り上げに

 販売チャンネルの多様化が進んでいる。全国の百貨店の既存店売上高は、3月まで13カ月連続で前年同月実績を割り込んだ。ショッピングセンター(SC)では3月の既存店売上高は5カ月ぶりに前年同月比プラスとなったものの、衣料品の売れ行き不振は続くなど、実店舗の業績は苦戦している。代わりに拡大しているのが電子商取引(EC)だ。この流れを取り込み、差別化にどうつなげるか。SCや専門店は知恵を絞っている。

「駅ビル」だって集客はつらいよ


 「駅ビルは集客が楽だとされているが、買い物をする方法の多様化などで伸び悩んでいる」。ジェイアール東日本企画(東京都渋谷区)の加藤肇駅消費研究センター長はこう指摘する。消費者が駅ビルで気に入った商品を見つけると、かつてはその場で買わない場合は再訪して購入する場合が多かった。

 しかし、駅ビルの主な利用者である女性は多忙になっており、店内で悩んだり再訪したりする余裕がなくなっている。商品を見る目も厳しく、空き時間にインターネットでその商品の評判や価格を調べ、ECサイトを利用して購入する、といった行動傾向が増えているという。

 店舗で商品の質感を確認したり、従業員の説明を聞いたりした上で、安く買えるECサイトで購入する「ショールーミング」は賢い消費行動といわれる。一方で実店舗にとっては、店舗の維持費や商品を抱えるコストが負担になりかねない。

 駅ビルを利用した人に、後日使うことができるクーポンを配布するといった工夫をすることにより、駅ビルで見て購入はネットを使うショールーミングを防ぐことができると同社は見る。

総菜、呼び水に


 来店を促す施策として「良い店舗づくりに意識が行きがちだった。しかし、そもそも消費者は時間がない」(加藤センター長)。コンビニエンスストアなどと同様に駅ビルでも、簡単に食べられる総菜の需要が高まっている。

 総菜のできあがり時間を事前に告知するといった工夫で、鮮度の高い商品を買える点を訴求するとともに、待ち時間で駅ビル内の回遊も促せると提案する。
              

 パルコは14年にスマートフォン向けアプリケーション(応用ソフト)「ポケットパルコ」のサービスを始めた。店舗のテナントで扱っている商品の取り置きや購入などができる。

 同アプリの特徴は、各テナントのスタッフが投稿する商品情報だ。林直孝パルコ執行役は「スタッフが投稿したブログの文章やコーディネートの写真を見て、『ファンになり店に会いに来た』というお客さまもいる」と話す。

 同アプリを通じて商品を販売した場合は、テナントの売上高として計上する仕組みだ。同アプリの利用者が店舗を訪れると、買い物に使えるポイントをもらえるといった取り組みで、来店も促している。

 経済産業省がまとめたECに関する市場調査結果によると、日本国内におけるBツーC(対消費者)のECの規模は、16年に15兆1358億円となり6年間で約2倍に増えた。商取引に占めるEC市場規模の割合(EC化率)は5・4%だ。

ロフトはリアル店舗で“わくわくどきどき”を


 雑貨販売業のロフト(東京都千代田区)は6月23日、東京・銀座に新たな旗艦店「銀座ロフト」を開く。約3000平方メートルの売り場に、デザイン性と機能性を兼ね備えた家電や、遊び心のある文具などをそろえる予定だ。発売したばかりの化粧品を試せるカウンターも設ける。

 同社はセブン&アイ・ホールディングス(HD)の傘下だ。セブン&アイ・HDは実店舗とネットを融合する「オムニチャネル戦略」を、グループ横断で進めている。

 ロフトの藤野秀敏執行役員は「雑貨が持つ“わくわくどきどき”を肌で感じられるのは、店頭の魅力」と力を込める。
ロフトは“肌感覚で楽しめる”売り場作りを目指す

(文=江上佑美子)

日刊工業新聞2017年5月4日

日刊工業新聞 記者

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05月08日
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オムニチャネルは小売りにとって成長戦略の一つ。だが、利便性だけではない“買い物の楽しさ”を提供するということが、経営の足腰の強さにつながるといえそうだ。
(日刊工業新聞第ニ産業部・江上佑美子)

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