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米国は何を要求してくるのか

日米経済対話の初会合、18日から。貿易・為替で圧力回避へ
 麻生太郎副総理兼財務相とペンス米副大統領による「日米経済対話」の初会合が18日、都内で開かれる。「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領の意向に沿い、貿易不均衡や為替レートをめぐって対日圧力を強める契機となる事態も想定される。日本側は貿易や為替に議論を集中させず、米国への経済協力を含む広範なテーマを協議することで関係を強化し、対日圧力をどこまで回避していけるかが焦点になる。

 「米国が何を言ってくるのか分からない」―。石原伸晃経済再生担当相が指摘するように、政府は経済対話の行方に警戒感を示す。

 今回の経済対話は、経済政策や日米2国間貿易の新たな枠組み、米国の雇用を創出するインフラ・エネルギー分野での経済協力などを議論する見通し。ただ、どのテーマでどこまで踏み込んだ議論となるのかが読みにくい。

 トランプ大統領は環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を決め、2国間交渉で新たな貿易・投資ルールを策定したい意向を示しており、環境規制など自動車の非関税分野や農産物の関税をめぐり市場開放を迫られる契機となる懸念がある。米通商代表部(USTR)が「日本は農業分野で第1の標的」と強硬姿勢を示した経緯もあり、貿易・為替が経済対話の争点になる可能性がある。

 3月の主要20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)では、これまで踏襲した「保護主義に対抗する」との表現が削除され、代わって「過度の世界的な(貿易)不均衡を縮小」する内容が明記されたことも、日本側には懸念材料だ。

 麻生副総理兼財務相は、貿易・為替に限定しない広範な議論を求めている。今回の経済対話では日米の国益に資するインフラ整備での経済協力の議論などを活発化し、対日圧力が緩和されることが期待される。

 日本は米国にとって貿易赤字国であるものの、米国の雇用や成長に少なからず貢献してきた。内閣府の資料によると、米国における日系企業による製造業の雇用者数は38万3000人(2014年)と国別で1位。日本の対米直接投資残高も4110億ドル(15年)と英国に続く2位だ。

 日銀の金融緩和が円安誘導でなく、デフレ脱却が目的である点も米国に粘り強く説明することが求められる。

ニッセイ基礎研究所の櫨浩一専務理事は「日本としては広範なテーマで議論したい、米国は貿易不均衡の解消にテーマを絞りたいのだろう。どのテーマを中心に議論するかが、今回の経済対話の争点になる」と指摘した上で、「いずれにせよ日本は貿易不均衡の是正に向け、何らかの妥協点を見いださなければならないだろう」と見通している。
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日刊工業新聞2017年4月13日
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
ペンス副大統領は日本企業も数多く進出するインディアナ州知事を務めただけに、経済界からは「話せば分かる相手」との信頼感があるようです。少なくとも経済問題に関する協議の場をトランプ大統領から切り離すことには成功したわけですが、米側が何を要求してくるかは予断を許さない状況です。

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