AIが移住をコーディネート。福岡・糸島市が九州大・富士通研と実証中

 福岡県糸島市が移住を希望する人と移住先のマッチングに人工知能(AI)を活用する実証実験に取り組んでいる。移住相談を効率化し、対応する職員のノウハウの差などをAIが補う。ミスマッチを防ぎ、移住後の満足度を上げ、定住促進を目指す実験で「自律成長するAI」が活躍の場を広げつつある。

 糸島市は福岡市に隣接し、通勤の利便性や自然の豊かさなどから移住候補として注目される地域。糸島市役所では移住に関する窓口での相談のほか電話やメールでの対応も増えている。ただ、「漠然としたイメージで相談に訪れる人もいる」(地域振興課)ため、対応には希望者のニーズを把握する難しさが立ちはだかる。

 移住先に求められる要素は年齢や家族構成などによってさまざま。さらに近所付き合いなど地域特性も踏まえる必要があり、対応には知識やノウハウが要求される。

 2016年9月に始まった実証実験は九州大学と富士通研究所(川崎市中原区)と共同で実施。九大のマス・フォア・インダストリ研究所は14年に「富士通ソーシャル数理共同研究部門」を設け、人の心理や行動を数理モデルで構築し、社会課題解決に向けた研究に取り組んでいる。

 今回の実験は富士通のAI技術「Zinrai(ジンライ)」を活用。移住希望者の属性と好みの関係性を事前に数理モデル化することでシステムを構築する。大量のデータがない状況から実際のデータが加わることでマッチング精度は徐々に高まっていく。

 16年11月に東京都内で開いた移住相談会では来場者が事前に年齢や性別、家族構成などの属性を入力。システムが提示する地域を参考に相談を進めた。ただ、ニーズが明確でない段階で情報を入力した場合には来場者の希望とズレが生じることもあり、納得できるデータの提示に時間を要するなどの課題も浮き彫りになった。

 その後の相談会では、属性と好みとの関係性を修正してマッチング精度を向上させるだけでなく、システムをどの時点で利用するかなど使い勝手を意識した変更を重ねつつ実証を進めている。

 今後はシステムを市の移住情報ウェブサイトで展開することも検討する。実用化に向けて富士通研究所の大堀耕太郎シニアリサーチャーは「社会に受容される体系づくりが必要」と語る。従来はノウハウが必要な業務において、人とシステムの“自然な対話”を成立させるためにAIが活躍する日が近づいている。
(文=西部・高田圭介)

日刊工業新聞2017年3月29日

三苫 能徳

三苫 能徳
04月03日
この記事のファシリテーター

先日、ニュースで「鹿児島移住ドラフト会議」なるものも見ましたが、移住者誘致はアイデア勝負の様相です。
この糸島市のように移住先として知名度がある自治体は、希望者は多いが理想と現実のギャップを埋める必要あり。一方で認知度が低い自治体はまず知名度を上げないといけない。それぞれ課題がありますね。なんだか就職活動みたいです。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

PRmore

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。