破産法WHは一体いくらで売れるのか

3000億円のバリュー?東芝は厳しい条件を突きつけられる

 東芝が海外原子力発電事業からの撤退を急ぐ。早ければ28日、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する。東芝はWHを売却し、海外原発事業のリスクを断ち切る。

 破産法11条の適用申請により、裁判所の主導による公平、オープンな環境下で、債務を整理し、再建策を検討することになる。企業法務に詳しい安國忠彦弁護士は「WHは自ら『まな板の鯉』になることで、スポンサー候補に安心感を与えられる」と説明する。また清算リスクが意識され、企業価値が下がることもスポンサー候補にとってメリット。

 ただWHは東芝の巨額損失の発生源になった“難あり物件”。スポンサー候補との交渉は難航必至の情勢だ。WHが手がける米スキャナ電力のVCサマー発電所(サウスカロライナ州)の2、3号機、米サザン電力のボーグル発電所(ジョージア州)の3、4号機の建設は、いまだに大きな将来リスクを抱えるからだ。

 それは建設コストのさらなる上昇。両原発とも08年に受注したが、この間、コストが増加し、巨額損失の元凶になった。東芝は2月、「相当に保守的」(畠澤守執行役常務原子力事業部長)に、完工までの追加コストを61億ドル(約6732億円)と見積もったが、業界では超過の可能性を指摘する声は少なくない。

 WHのスポンサー候補は将来リスクを抑えるため、東芝に厳しい条件を突きつけてくる公算が大きい。61億ドル以上のコスト超過分について一定範囲内で東芝に負担を求めるケースが想定される。

 また東芝にはWHに対する7000億円超の親会社保証がある。建設が完工予定日に間に合わなかったり、完工が不可能になったりすると、WHは電力会社から損害賠償を請求される。これをWHが負担できない場合、東芝が肩代わりしなければならない。通常、親会社保証は売却に伴って解除されるが、東芝は一部の継続を求められる可能性もある。

 東芝は6000億円を投じてWHを買収した。そのWHの現在の価値はいくらなのか。ファンド関係者は「3000億円のバリューが出てもおかしくない」とする。原発の新設事業が赤字を垂れ流している一方、ストック型の燃料・サービス事業があるからだ。

 この事業の15年度の売上高は3786億円、営業利益は341億円と堅調で、綱川社長も「収益性は高く、評価してくれる企業もあるはず」と期待する。一方、ドイツが脱原発にかじを切るなど、世界では脱原発や原発縮小の動きが鮮明になっている。再度、東京電力の福島第一原発のような事故が発生すると、「世界の新設計画はストップするだろう」(業界関係者)。

 安定事業とハイリスク事業を抱えるWHの価値をどう判断するか。「経済合理性というよりは、経営感覚の問題になってくる」(安國弁護士)。WHが韓国電力公社グループに支援要請したとの見方もあるが、同グループとの交渉がスムーズに進むのか、ほかにWHを高く評価するスポンサー候補が現れるか、予断を許さない。
                    

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日刊工業新聞2017年3月28日「深層断面」から抜粋

後藤 信之

後藤 信之
03月28日
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WHの破産法11条の適用申請により、東芝に一時的に損失が発生する公算も大きい。東芝はWHに対して投融資を実施しているとみられる。WHの債務を整理する手続きで、東芝の債権者としての地位は下がるため、金融筋は「債権放棄を求められるのではないか」とした上で「その場合、数千億円の損失が発生する可能性がある」と予想する。

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