「寝る間を惜しんで働く」は美徳ではない。睡眠障害のリスクと向き合おう

日本人の睡眠時間は米国と比べ1時間少ない。SASは重大事故を引き起こす

 仕事上のストレスやパソコン、スマートフォンによる夜間の光環境の変化などで、睡眠障害に悩まされている社会人も少なくない。睡眠障害の一つ「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は、生活習慣病などさまざまな病気を発症するリスクを高め、関連する重大事故なども相次ぐ。普段、気がつきにくい身近な病気で対策も不可欠だ。

 SASは睡眠中に呼吸が止まったり、弱くなったりすることで、日常生活でさまざまな障害を引き起こす病気だ。睡眠障害の一種で、睡眠が“質的”に不足することで寝ていても睡眠の役割を十分に果たしていない。

 主な症状にはいびきや日中の眠気、起床時の頭痛などのほか、高血圧や高脂血症、糖尿病など生活習慣病とも深い関わりがあることも明らかになっている。夜間に血圧が下がらないため、脳卒中や突然死などの発症リスクも高める傾向にある。

 また、産業災害や交通事故など社会にも悪影響をもたらしかねない。SASが原因で「運転手が居眠りして重大事故を招いた」ことも記憶に新しい。

 SASの診断は問診などのスクリーニング(選別検査)や簡易的な睡眠ポリグラフ検査(PSG)、病院で行う確定診断のPSGで行う。

 治療にはCPAP(経鼻持続陽圧呼吸)装置やマウスピースなどがあるが、あくまで対症療法でSASを根本的に治療するものではない。治療には中長期の視点で専門医との連携が不可欠だ。

 欧米諸国と比べ、日本はSAS対策の“途上国”だ。だが、運輸業・旅客業で過労運転防止によるSAS対策なども進みつつあり、一般企業でも健康経営の観点でSAS対策が注目されている。

 例えば、ローソンは全従業員にSASのセルフチェックの案内や希望者に簡易検査を自己負担で実施した。睡眠の大切さに気付く時期に来ている。

専門医は語る


医療法人RESM 新横浜睡眠呼吸メディカルケアクリニック院長 白濱龍太郎氏

 日本では「寝る間を惜しんで働く」ことが美徳とされ、睡眠が軽視される傾向があった。日本人の睡眠時間は米国やフランスと比べ1時間程度少なく、日本人の5人に1人が睡眠に悩みを抱えているというデータもある。

 だが、睡眠は日中の活動を支える大事な時間だ。体に休息を与え、ストレスを処理し、免疫機能にも関与するとも言われる。決して“惰眠”ではない。

 実際にSASなどの睡眠障害が関与した事故も相次いでいる。06年当時の調査では、眠気による経済損失は年間3兆4693億円に上った。ただ内訳を見ると「交通事故の増加」が2413億円に対し、「作業効率の低下」が3兆665億円と一番多かった。

 SAS対策は事業者と産業医・主治医が連携し、治療と就労の両立を円滑に進めることが必要だ。

日刊工業新聞2017年1月5日

村上 毅

村上 毅
01月08日
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健康問題の中でも睡眠障害は影響が見えづらく、どうしても対策が遅れがちだ。また「睡眠=プライベートの問題」という認識が強いことも、企業が対策が後手に回る背景にある。睡眠不足は生産性の低下や重大事故を引き起こすリスクを高める。まずは怖さを認識することが重要なのだろう。

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