次世代がん治療「BNCT」もうすぐ実用化

細胞をピンポイントに破壊、難治性がん対策に期待高まる

 次世代のがん治療法である「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」が実用化に向け、熱気を帯びてきた。現在治験中で、早ければ2019年にも薬事承認され、医療としての利用が期待されている。従来、治療が難しかった難治性がんに対応でき、正常細胞にも影響がないとされるBNCT。がん治療の新たな道を開く。

 福島県郡山市にある「南東北BNCT研究センター」。グループに総合南東北病院などがある一般財団法人脳神経疾患研究所が、病院としては世界で初めてBNCT装置を導入した施設だ。

 事業費総額は約68億円で、東日本大震災からの福島県の復興と医療機器産業の振興に寄与するものとして、福島県の補助金約43億円を受けて、実施した。センターは地下1階―地上2階より構成されており、延べ床面積は約5983平方メートル。

 地下1階に京都大学と住友重機械工業が共同開発した加速器(サイクロトロン)1台を採用し、治療室を2部屋備える。故障時のバックアップとしてはもちろん、効率性を高めるのが狙いだ。

 13年3月に建屋の建設に着工し、装置の設置を進めながら、14年9月に建屋が完成。装置の安全性や性能向上試験を経て、15年11月に開設。病院として世界で初めてBNCTの臨床試験による治療を開始した。

治験に手応え


 同センターの高井良尋センター長(弘前大学名誉教授)は「治療を希望する患者の相談も多く、治験は順調に進んでいる」と手応えを感じている。16年1月に悪性脳腫瘍、7月に頭頸部(けいぶ)がんの治験が始まった。治験の期間はそれぞれ2年間。腫瘍の縮小率や治療後の生存率などを見る。

 BNCT治療では中性子の照射時に患者の体位を固定するための準備に数時間かかる。同センターでは治療計画も含めて、症例ごとにデータを集積しながら改善点などの検討も進め、ノウハウを作り込んでいる。

 「今は1週間に1例を実施するのがやっとだが、データやノウハウも集積できてきている。実際の医療が始まった際には1日4例の対応は可能になる」(高井センター長)としている。今後、医師や技師などスタッフの増員も検討していく。

 19年にも厚生労働省からの先進医療の認可を受けて、治療を行っていく方針だ。高井センター長は「BNCTはポテンシャルが大きい。BNCTだけで治すのでなく、BNCTで腫瘍を小さくすればその後に外科的治療もできる。がんの治療法のパラダイムシフトが起きる可能性がある」と期待を込める。

<次のページ、研究炉で500例超える実績>

日刊工業新聞2016年11月30日

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村上 毅

村上 毅
12月03日
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一度は“捨てられた”技術を粘り強く研究し、臨床研究、治験に結びつけてきた「BNCT」にはドラマがある。がんの治療は世界的な課題であって、BNCTの研究に世界が乗り出している中、日本は臨床研究の実績で突出し、まさに実用化に一番近い位置にある。国内はもちろん、海外展開も夢ではない。

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