形が見え始めた日本版「工場と工場をつなぐ」インターネットの世界

自動車メーカーがけん引しWG活動で成果。標準化へ2年目が正念場に

 モノのインターネット(IoT)技術が普及段階を迎える中、法政大学デザイン工学部の西岡靖之教授を先導役に日本発の標準化と価値創造を目指してきたインダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)。活動初年度の2015年度は、集まった148の会員(正会員、サポート会員などすべての会員)から20のワーキンググループ(WG)を結成。工場と工場が「つながる」仕組みを実現するため「業務シナリオ」と呼ぶ業務プロセスの定義づくりや、それに基づく実証実験などを行ってきた。四つのWGが行った活動を振り返りつつ、日本発IoTの普及の可能性を探る。

クラウドで管理、各設備の状況を共有


 NEC、三菱重工業、旭硝子など7社は「保全データのクラウド共有とPDCA」をテーマに実証実験を行った。設備の表示器をウェブカメラで撮影し表示内容をデータ化することで、各設備の状況をクラウドで共有する仕組み。これにより古い設備などでも簡単にIoT対応にできることを確認した。

 今回7社が試みたのは、表示器上の数値や文字を撮影し、画像処理により再度デジタルデータ化する手法。稼働状況を現場の外から監視できるようになる。カメラなどを外付けする方式なので、既存の設備に手を加えることなく簡単にシステムを構築可能。「ネットワーク機能を持たない古い設備にも利用できる」(金村仁美NEC製造・装置業システム開発本部部長)という。今後は色、グラフなどもデータ化できるようにしたい考えだ。

「ペッパー」トラブル対応、企業間の調整効率化


 小島プレス工業(愛知県豊田市)、パナソニックなどが取り組むテーマは「企業を超えて連携する自律型製造実行システム(MES)」。MESを調達先の工場と連携させ、企業間の調整を効率化することが目的だ。小島プレス工業と子会社の丸和電子化学(同)を実証の場とし、効果を確かめている。

 調達先で問題が起こった場合、発注側のMESに反映させ計画変更できるようにする。実証実験では調達先である丸和電子化学の設備から稼働情報を収集し、小島プレス工業のMESに取り込むシステムを構築した。

 情報の収集にはソフトバンクの人型ロボット「ペッパー」などを活用。設備に問題が起きた場合、ペッパーが現場に駆けつける。カメラなどで状況を現場責任者と発注側に伝え情報共有を促す仕組み。これにより対応を円滑化できるという。

人と機械つなぐ。「匠の技」データ化


 トヨタ自動車などが取り組んだテーマは、やや異色だがもっとも高度な問いかけかもしれない。最新のIoT技術の普及を見越して、工場の中でいかに人と機械が協働しレベルを高めていくか、その働き方を標準化しようという試みだ。

 実証実験では、優れた技能者が持つ「匠の技」のデータベース化を図った。工作機械にさまざまなセンサーをつけて機械加工の良品条件を計測し、データベースに取り込む仕組み。

 これにより、低スキルの作業者でも難しい加工を再現できるようにした。座長を務めたトヨタの大倉守彦氏は「機械学習とも組み合わせて、人と機械がお互いに能力を高めていくモデルが作れれば、日本の現場力をダントツにできる」と話す。IoT時代でも、工場の主役は「人」だということをあらためて打ち出そうとしている。

町工場が連携受注、役割分担・納期素早く


 今野製作所(東京都足立区)、西川精機製作所(同江戸川区)、エー・アイ・エス(同)などは、IVIでの活動を通じ町工場同士の連携を試みている。金属加工業3社が情報通信技術(ICT)でつながり、効率的に連携することで不得手な領域を補い合う仕組み。属人的な業務プロセスなどから脱却し、競争力を高めることが目的だ。

 連携の基盤は西岡教授が開発した小規模企業向け情報連携ソフトウエアの「コンテキサー」。引き合い情報などを複数の企業で共有し、役割分担や納期などを素早く検証できる。従来、連携する場合は電話やメールで情報をこまめに伝達し合う必要があり、「特定のキーマンに業務が集中しやすかった」(今野浩好今野製作所社長)。

 今後は、受発注データや生産の進捗(しんちょく)なども共有できるシステムを構築する方針だ。

<次のページは、西岡靖之IVI理事長に聞く>

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清水 信彦

清水 信彦
03月30日
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IVIの特徴はユーザー企業が主体となっていること。特にトヨタ、日産、ホンダ、マツダと自動車メーカーが加わっているのは強い。
そして対象としているのはFAシステムではなく、より上位の情報システムの領域。よりFA側、フィールド側の話で標準化を進めていると想って参加して、ちょっと当てが外れた企業もあるようだ。
20のWGが取り組んだテーマは、重なったりバラバラだったり、まちまち。これをどうまとめて、脱落者を出さずに盛り上げて、そして日本発標準化みたいなものを打ち出していくか。二年目の取り組みは、なかなか大変そうではあります。

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