“世界最強の製造業” GEの勝ち続けるための人材育成と企業文化

90年代から現在までどのように戦略を変えてきたのか

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)の初代CEOを務めたチャールズ・コフィン氏は、社員のことを「わたしの部下(my subordinates)が・・・」と語ったことは一度たりともない。必ず「私の仲間(my associates)」と呼ぶ。そんな人物だった。コフィン氏は、自らの経験から“成功の核となり魂となるのは人である”と語り、「人」を重視した経営を行った。そして当時まだ若い企業であったGEに、マネージャー育成制度を基盤として整えたのだ。

 そんなGEの人材育成も、時代に合わせてその手法を常に変化させている。時代や市場環境が変われば、企業は戦略を変えて勝ちに行かなければならない。戦略が変われば、その遂行に必要となる能力も、求められる企業文化さえも変わる。ダーウィンの進化論に等しく、企業も時代に適応し絶えず成長や進化・変化を続けられるプレイヤーが勝つのだ。

GEの戦略と企業文化の変遷


 実際、90年代から今日にかけてGEがどのように戦略を変え、人材育成や企業文化形成の重点を置きかえてきたかをご紹介する。

●1990年代:卓越したオペレーションの追求
 シックス・シグマやCAP(変革推進プロセス)など独自の経営ツールを活用することで、不確定要素を排して物事を着実にコントロールすることで収益力向上を目指した時代。人材育成においても、各層におけるプロジェクト管理力と実行能力の鍛錬に重きを置いた。

●2000年代:成長機会の創出
 新興諸国が急速に成長したこの時代、グローバリゼーションはローカリゼーションであるとして、各国や地域への権限委譲を進め、意思決定スピードを向上。同時に、各地域ごとに異なる課題や顧客ニーズに合わせた現地げ起点の製品開発(リバース・イノベーション)を推進した。マーケティング力強化と同時に、現場社員たちがイノベーションや成長のアイデアを提案し開発へと繋げられる仕組みを整えた。

●2010年代:シンプリフィケーションの徹底
 世界の情勢や産業が複雑に入り組み、経済も不安定な時代。将来の予測をつけづらい時代にあっても確実な成長を遂げるために、あらゆる物事を徹底してシンプルにする戦略を遂行中。

 金融部門売却決定とインダストリアル分野に特化する事業再編、意思決定プロセスの簡素化など仕組みの面だけでなく、社員30万人の仕事のやり方をシンプルに変えることを目指している。「それは重要か重要でないのか」を考え、変化や新しい価値を生み出す重要なことだけにフォーカスする風土の醸成に励む。

リーダーシップにこだわる


 GEには「30万人の社員全員がリーダーシップを発揮する」というフィロソフィーがある。GEでの「リーダーシップ」は、ポジションではなく「変化を起こし、人を元気づけたり 動機付けることのできる影響力」を意味する。

 これは、全ての車両にモーターがついている新幹線が速く走ることができるのと同じだ。新入社員グループの1人が「こんなことやってみようよ!?」と面白いことを企画し、仲間を巻き込んでやってみるー。それも立派なリーダーシップであり、そんな人材を各層に求めているという。

 GEは人材育成に毎年10億ドル(約1,200億円)を投資しており、GEの経営幹部層は執務時間の3分の1を人材育成に充てている。たとえばCEOのジェフ・イメルト氏もGEの研修センターで自ら教鞭をとるほか、各国訪問の折には現地社員との直接対話(タウンホール・ミーティング)を欠かさない。

 毎年世界で一斉に実施する “人と組織の棚卸し” とも言えるピープルレビューセッションにイメルト氏が費やす日数は、年あたり20日以上という。

 同様に、他のビジネス部門の責任者も、各地における社員との直接対話やトレーニング・プログラムでの講義に相当な時間を充てている。GEでは、各階層において自分より優秀なリーダーを育成することが使命とされています。


GE Reports Japan

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明 豊

明 豊
12月03日
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ディー・エヌ・エーの南場さんとか採用にこだわる経営者も多いが、このような大企業で人材育成のシステムを企業戦略に応じて柔軟に変えていく会社はそうそうないだろう。一時、サムスンの人材育成システムが注目されたことがあったが、かつて日本の大手製造業の強みでもあった人材教育や人事評価などは、今、弱点となっている部分も多い。

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