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やっぱり電子部品が“IoTシーテック”の主役

先進技術を先読み、ソリューションに仕立て上げる
やっぱり電子部品が“IoTシーテック”の主役

センサーを用いて「空間情報」に解釈し、場の雰囲気や盛り上がりを把握する(村田製作所)

 電子部品メーカーがIoT(モノのインターネット)を活用した問題解決(ソリューション)型ビジネスを訴求している。「CEATEC(シーテック)ジャパン2017」では最新の電子部品を活用し、今まで把握できなかった動きや感覚、事象などのデータを集めて課題解決につながるモデルを提案する。日本勢が生み出す世界最高水準の部品がIoTの用途を広げており、より身近な存在になりつつある。

 村田製作所は場の雰囲気や人の親密度など、抽象的な情報を可視化する仮想センサープラットフォーム「NAONA(ナオナ)」を出展している。音声という“モノ”をセンサーで収集し、クラウドに送信して分析。雰囲気などを示す「空間情報」に変えて活用する。飲食店の活況度合いの把握など、これまでデジタル化できなかった情報へのアプローチを進める。クラウド連携などのシステム面はITサービスを手がけるウフル(東京都港区)が支援する。2018年4月からのサービス開始を目指す考えだ。

 アルプス電気は投げた野球ボールの球種や球速、回転数などを算出するデモを紹介。加速度や角速度、地磁気センサーを組み合わせた「9軸センサーモジュール」をボールに搭載した。これにより、これまで感覚でしか確認できなかったボールのキレや伸びといった変化を定量的に計測できる。スポーツトレーニングなどでの利用を狙っており、アルプス電気の木本隆専務は「実際に使われるシーンを細部まで想像している」と強調した。

 一方、ロームは弦楽器のレッスン向けに、加速度センサーや無線通信モジュールなどを搭載した開発キット「センサメダル」を提案する。肘と手首にセンサーを装着することで、楽器の弓を引く速さや肘の軸のブレなどを可視化できる。18年春にも市場に投入する。スポーツや芸術の分野でもIoTソリューションが浸透しつつある。
加速度センサーを手首と肘に、弓を引く速さなどをグラフで可視化(ローム)

 「仮想現実(VR)酔いを極限まで減らす」―。TDKが展示したのは、VR用の体感ゲーム。内部に搭載されている慣性センサーは精度が高く、物の動きを正確に捉えることができる。例えばVRゴーグルを付けてゲーム内で体を360度回転させた場合、現実との位置ズレがほとんど発生しない。このズレの軽減が、VR利用時に体調が優れなくなる“VR酔い”を防ぐことにつながる。

 各社はブースの半分以上を製品紹介ではなく、デモを交えたソリューションとして展示している。展示の変化について、日本航空電子工業の小野原勉社長は「専門家に向けたサンプル製品の展示ではなく、体験や具体的な解決が求められている」と分析する。

 世の中に出回る電子機器のほとんどに、小型・薄型化の部品需要がある。だが、これからの電子部品メーカーには、スマートフォンや自動車などに含まれる先進技術を先読みし、ソリューションに仕立て上げる力が求められる。社会課題が複雑化し、解決型ビジネスが要求される中、世界的な電子部品技術を持つ日本メーカーの真価が試される。
【お知らせ】
◆日時 10月5日 13時ー15時
◆会場 幕張メッセ 国際会議場1階 103会議室
◆定員 150名(聴講無料、先着順)
◆登壇者
 ●会津若松市企画調整課 山埼彬美氏
 ●会津大学産学イノベーションセンター教授 石橋史朗氏
 ●アクセンチェア(株)戦略コンサルティング本部シニア・マネジャー 藤井篤之氏
 ●(株)ルートレック・ネットワークス代表取締役 佐々木伸一氏
 ●日刊工業新聞社編集委員 松木喬(モデレーター)
<聴講希望の方は直接会場へお越し下さい>


日刊工業新聞2017年10月5日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
 スマホや自動車に続いてIoTの領域でも、日本の電子部品メーカーの存在感は高い。IoTを支える多種多様なセンサー技術や電力消費を極限まで抑えた通信技術などは、日本企業の得意とするところだ。しかし、部品メーカー自らがソリューションまで提案する背景には、セットメーカーの凋落が見え隠れしなくもない、ように感じます。

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