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海外の工場長が鬱にならないために、信頼できる弁護士を!

下請けであってもストなどが頻発する工場などは特に注意
 人口減少と高齢化が進む日本の先行きを見据え、海外に進出する中小企業が増えている。ただ現地の法制度への対応が不十分で、海外から撤退せざるを得ないケースも多々あるという。信頼できる弁護士を現地で確保することも視野に入れたい。

 取引先の大企業の海外進出に伴い、海外に工場を設けた中小企業は多い。人口が増加しているアジアなど海外市場に活路を求めて、現地向けに製品を販売する例も増えている。

 大企業の下請けとしての海外進出や、海外で生産した製品を日本に持ってくるだけなら、雇用と労働関係だけなので、あまり法律知識はいらないかもしれない。しかし、製品を売る場合は売買契約や債権回収、消費者保護など、さまざまな問題が起こっている。

 三宅坂総合法律事務所(東京都千代田区)の藤本卓也弁護士は「海外進出するに当たって、現地の販売代理店と契約書を交わさず、“白紙委任状”で任せきりにするケースが意外に多い」と話す。「日本人は話し合いで解決という感覚だが、海外は契約社会だから契約書が不可欠だ。その国の法律情報を一番知っているその国の弁護士が必要になる」と指摘する。

 藤本弁護士は2016年10月から、欧州、南米、アジアなどの弁護士によるセミナーを日本で実施し、現在までに10カ国ほどになった。「中小企業向けに始めたが、大企業社員の参加も多い」という。

 国勢調査による15年の総人口は約1億2709万人。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口によると、長期の合計出生率が1・44と中位に仮定した場合、53年に1億人を切り、50年後の65年には約8808万人に減少する。高齢化の進展で、旺盛な消費をする生産年齢層の比率が小さくなり、国内市場は確実に縮小する。

 このため、海外進出を考えている中小企業は今後も増えるだろう。ただ、進出する国向けの必要最低限の法律知識を習得すると同時に、現地の信頼できる弁護士を確保しておく必要がありそうだ。
日刊工業新聞2017年9月15日
加藤年紀
加藤年紀 Kato Toshiki
 地方などにある中小企業が海外進出する場合のリスクは、現地を企業を運営できる経験者がいないということ。下請けであってもストなどが頻発する工場などは特に注意が必要。アジアの日経企業の工場長は現地社員と様々なトラブルに巻き込まれて、鬱になることも多いです。  また、現地途上国から見た外資企業は裁判で争っても負けます。現地のJVパートナーがいないのであれば、現地に精通した弁護士やコンサルの力は確実に必要とされると感じます。なぜなら日本のように細かい法ルールが存在しないため、今までの事例判例に基づき企業リスクを評価せざるを得ないからです。日本の大きな弁護士事務所などがサービス提供をしている場合も、基本的には裏で現地の弁護士と相談して動いています。

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