石炭火力発電所は「座礁資産」になる!?

自然エネ財団の報告書を読み解く。メリットオーダー効果が現実に

 自然エネルギー財団(東京都港区)は、再生可能エネルギーの導入量が増えるほど電力コストの低下が見込めるとする報告書を公表した。燃料費が少ない再生エネの増加効果により、市場原理で決まる卸電力価格が下がるためだ。再生エネ普及を支える賦課金の負担額は増える見通しだが、卸電力価格に連動して電気代も下がれば全体の負担額が減る。

 自然エネルギー財団の木村啓二上級研究員が中心となって「固定価格買取制度5年の成果と今後の課題」と題した報告書をまとめた。

 その中で、太陽光や風力など再生エネ増加による将来の電力単価への影響を検討するため、2030年度の賦課金と卸電力価格を推計した。

 賦課金は電気代と一緒に徴収し、電力会社が再生エネ発電所から電気を買い取る費用に充てている。17年度の賦課金は1キロワット時当たり2・64円。1カ月に260キロワット時の電気を使う家庭だと686円を負担する。

 木村研究員らは賦課金、卸電力価格を推計するため火力発電の化石燃料価格と、発電量に占める再生エネ比率を設定。燃料価格は国際エネルギー機関(IEA)の報告書、再生エネ比率は政府見通しなどから想定した。

 30年度に燃料価格が低位、再生エネ比率25%の場合、賦課金は3・2円、卸電力価格は12・5円(いずれも1キロワット時)となった。

 再生エネ比率が34%なら賦課金は4・2円に上昇するが、卸電力価格は10・8円に低下する。燃料価格が中位でも再生エネ比率34%の方が、25%よりも卸電力価格が低くなった。

 再生エネが増えるほど卸電力価格が下がるのは、燃料費の安い電源から選ばれる「メリットオーダー効果」が働くためだ。太陽光や風力は燃料費ゼロであるため、発電量が増えても追加の燃料費がかからない。

 現状でもメリットオーダー効果が働いている可能性がある。卸電力価格は11年度よりも16年度の方が安くなっている。原油価格下落による燃料費低下もあるが、昼間ほど下落幅が大きいことから報告書では「急速な太陽光発電の普及による影響」と分析した。

 賦課金の上昇が国民負担と批判されることがある。ただ、国民は電気代と賦課金の合計額を払っている。電力コストが抑えられれば、賦課金が増えても合計額が下がる可能性がある。

 木村研究員は「賦課金よりも全体の単価をみるべきだ」と主張する。報告書では卸電力価格引き下げを実現するために、再生エネの施工費圧縮の必要性なども訴えている。

日刊工業新聞2017年8月28日

松木 喬

松木 喬
08月28日
この記事のファシリテーター

報告書の一部を記事としてまとめました。再生エネ普及に向けた課題にも目を通してほしいです。再生エネの価格下落、CO2排出規制対策によるコスト増によって石炭火力は競争力を失い、いずれは稼働停止に追い込まれると世界各地で警告が発信されています。「座礁資産」化です。メリットオーダー効果も火力に撤退を迫ります。一時は約50基の火力の新設計画があった日本ですが、計画を白紙にする動きも出ています。これも座礁資産、メリットオーダー効果のあらわれではないでしょうか。

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永里 善彦
永里 善彦
08月28日
この自然エネ財団の報告書は衝撃的である。電力供給が不安定な再生可能エネルギーが国レベルで増加すれば、ピーク時の余剰電力カット、余剰電力を逃す新たな電力網の構築、蓄電設備の増設等が必要となる。また、不安定な電力をバックアップするために臨機応変に発電できる火力発電の出動も視野に入れれば、これらにかかる費用は再生エネが国レベルで増加するほど余分にかかる。このコストは考慮されているのか。
なお、国の再生エネの固定価格見直しはこの点も考慮しているとすれば、国民は電気代と賦課金の合計額を払っているので再生エネの導入増加により電力コストが抑えられれば、賦課金が増えても合計額が下がる。原子力発電に国民の理解が進まない現在、エネルギー安全保障と国富の流出を防ぐ観点から、国産の再生可能エネルギーの更なる導入に注力すべきと報告書は示唆する。
  

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