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「現在のオフィス環境はイノベーションが最も起こりにくい」豪州に学ぶ働き方改革

カルダー・コンサルタンツ社長 ジェームス・カルダー氏インタビュー
 長時間労働の是正などを柱とする「働き方改革」に官民挙げて取り組む中、豪州の働き方改革が先進事例として注目されている。優秀な人材を確保するため、働く場所や時間を限定しないで生産性を向上させる仕組みや、従業員の心身の満足を重視する企業が増え、経済成長の一助となっている。同国でオフィス環境専門のコンサルティングを手がけるカルダー・コンサルタンツ(ビクトリア州)社長のジェームス・カルダー氏に話を聞いた。

―豪州にも働き方をめぐる問題はありましたか。

「日本と同様、長時間労働やストレスによるうつの問題はある。このため心身ともに健康で精神的に満足しながら仕事ができる『ウェルビーイング』への要請が高まっており、オフィス環境の改善への需要も増えている。女性の社会進出という点ではここ10年ほどで大きく変わった。企業では女性の役員も増えている」

―オフィス環境の改善はどのような効果をもたらしますか。

「現在のオフィス環境はイノベーションが最も起こりにくい環境だ。現在主流のオフィス環境は1950年代に生まれた、管理者が従業員を監視しやすいスタイルだ。シカゴやニューヨークの高層ビルから波及したルールやアイデアを今も踏襲している。今後のオフィスはいかにチームが機能的に働けるかを考えなければならない。誰のためにオフィスを設計しているのかを理解する必要がある」

―豪州の企業はオフィス環境の改善に積極的ですか。

「他の国に比べれば積極的だ。シドニーで『働き方改革』が起きたのはオフィス市場が他の先進国の主要都市に比べて小さく、競合他社が何をしているか見えやすいという理由もある」

―オフィス環境の改善はうまくいっているのでしょうか。

「全体として新しいスタイルのオフィスは高い効果を発揮しているが、失敗例もたくさんある。見よう見まねで導入してもうまくいかない。経営学の知識や人類学の知識など、いろいろなスキルを持った集団が必要。変革をマネージメントする存在も欠かせない。社内にいなければ当社のような専門家に派遣を依頼する方法もある」

―日本でも働き方改革に官民挙げて取り組んでいます。

「日本の首相は長時間労働の是正に本気だと聞いた。イノベーションが起きるチャンスだと思う。日本では高齢化の問題もある。新しいワークプレースは若い世代からシニア世代までがストレスなく働けるものにする必要があるだろう」

【記者の目/生産性向上につながる改革を】
近ごろは国内企業でもおしゃれなオフィスが増えていると感じるが、本当に生産性向上に結びついているか疑問に思うこともある。「日本でも(オフィス環境の改善に関する)正しいスキルを持った人材を育てたい」とカルダー氏。エビデンスに基づいたオフィス改革により、日本でもより良い働き方が根付くことを期待したい。(斎藤正人)
日刊工業新聞2017年8月8日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
日本でもフリーアドレスや全部の机がつながっているようなオフィスなども増えてきましたが、記事にあるように「誰のためのオフィスなのか」をまず考えてから作っていかなければ、見た目がオシャレなだけになりかねません。

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