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航空機部品の3Dプリンター革命はどこまで進むのか

GEのLEAPエンジン、半分を3Dプリンターで製造
航空機部品の3Dプリンター革命はどこまで進むのか

25%もの軽量化を実現した、LEAPエンジンの3Dプリンター製ノズル

 航空機エンジンは大きくて複雑だが、驚くほど小さな部品がその性能に大きな違いを生み出すこともある。今からさかのぼること10年、GEアビエーションとフランスのサフラン・エアクラフト・エンジンの合弁企業であるCFMインターナショナルは、燃費効率の良い新型エンジンの開発に着手した。

 これが昨年夏から商業運転を開始したエアバスA320neoに搭載されているLEAPエンジン開発のはじまり。CFMインターナショナルが手掛けるエンジンは単通路型のナローボディー機用エンジンが主流で、このマーケットは規模が大きいため収益が期待できる一方、燃料消費と排気ガスを劇的に低減させる必要性に直面していた。

 そんな中、カギとなったのは燃料ノズルだった。GEアビエーションは、試行錯誤の末、効率的にエンジンの燃焼器に燃料を噴射できる燃料ノズルの設計に成功した。

 最近までGEアビエーションでエンジニア部隊を率いていたムハンマド・エフテシャミー氏は「なんとまぁ、これはスゴイ設計だ、と思いましたよ」と振り返る。

 チームは18カ月の間にエンジンの半分を3Dプリンターで製造できるようになり、900点の部品をたった16点に減らした。

 この中には従来300の部品でできていたものもある。これらの部品は従来品より40%軽く、60%安く仕上がった。エフテシャミー氏は「これまでのやり方でこれらの部品を作ろうとすれば、だいたい10~15社のサプライヤーが必要で忍耐力も求められます。ナットやボルトを準備し、溶接したり締め金を取り付けたりもしなければいけません。でも、それらはすべて不要になったんです」と説明する。

 エフテシャミー氏はいう。「マシンの使い方を習得させたら、実践的な課題を与え、エンジニアたちに言うんです。解決策を見つけてそれを3Dプリンターで造ってみろってね」ー。

 ATC(アディティブ・トレーニング・センター)では、ものづくりに携わるエンジニアたちにプリンターの使い方をマスターさせるだけでなく、材料の専門家を訓練してサプライチェーンの再構築も図っている。

 「今、何百機もの大きな航空機が世界中を飛び、機械部品を運んでいます。でも近い将来そんなことは全部不要になって、必要なものは3Dプリントするだけで済むようになるかもしれません」(エフテシャミー氏)。

日本も乗り遅れるな!


 アルミニウム、伸銅、ステンレスなど、各種材料の加工・販売事業を展開する白銅。2014年に金属3Dプリンターを導入、翌年にはサービスビューロー(受託造形)に新規参入した。「モノづくりを変える」とされる積層造形技術をいち早く取り込み、既存事業の維持・拡大につなげることが狙い。自動車、産業機械、航空宇宙といった分野で実績が出始めている。

 「金属プリンターはこれからのモノづくりの主役になる」―。角田浩司社長は、サービスビューロー参入の理由をこう説明する。既存事業で主要顧客の中小企業にとって、金属プリンターに数億円を投資するのは困難。このため、「当社の装置を使っての積層造形技術の導入・活用に貢献したい」(角田社長)考えだ。

 利用するのは米3Dシステムズ製の「プロX300」。神奈川工場(神奈川県厚木市)に設置し、マルエージング鋼、ステンレス鋼といった材質の造形品を提供している。

 「自動車、工作機械、精密機械などに関連する仕事が多い。また品質管理規格『JISQ9100』の認証を取得したため、航空宇宙分野からの引き合いも増えている」と山田光重取締役特注品営業本部長は進ちょく状況を紹介する。これまで取引のなかった企業から受注するなど、顧客開拓にもつながっているという。

 課題は「当初の想定以上にお客さまは積層造形の活用に慎重。また、高品質に造形するには経験とノウハウが求められる」(同)ことだ。このため白銅は、ユーザー育成を目的に積層造形技術のセミナーを積極的に開催。「今後も月1―2回程度開いていきたい」(同)という。

 さらに技術を蓄積するため、設備も拡充する方針。新たな造形装置のほか、測定機器など品質保証用の機械も導入する予定だ。金属積層造形の技術では欧州がリードしているのが現状。「遅れを取り戻すには先行投資が不可欠」と角田社長は力を込める。

<セミナーのお知らせ>


【日時】 7月28日(金)13:00~17:00
【会場】 三菱ビルコンファレンススクエアM+(東京都千代田区)
【講演】 「金属3Dプリンター業界の最近の動向」「日本の医療への活用方法(人工骨での活用)」など白銅とSOLIZE Products(神奈川県大和市)、J・3D(名古屋市港区)の受託メーカー3社が最新動向を紹介
【定員】 100名
【参加費】5,000円(消費税込み)

応募はこちらから

白銅の航空宇宙分野向け造形サンプル


GE Reports Japan×日刊工業新聞2016年12月22日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
海外では3Dプリンターで航空機の金属部品を製造する例が増えてきているが、国内メーカーの造形ではまだ品質などに課題がある。プリンターの制御技術や造形物の熱変形など、積層造形には特有の課題が多いためだ。設計のソリューションも進化しており、今後、日本での加工領域も広がるだろう。

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