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自動運転の最前線を行くタイ人研究者「交通が世界一安全な国、日本だからできること」

<ニュースイッチ Event Speaker紹介>ポンサトーン・ラクシンチャラーンサク東京農工大准教授
 タイのチュラロンコーン大学機械工学科を卒業後、1999年に東京農工大学の修士課程に国費留学生として来日。自身の研究室を構えて7年がすぎた。自動車の運転支援システムや、動作制御に関する研究に取り組む。

 現在、力を入れるのは高齢者向けの運転支援技術。運転の上手なドライバーの動きをモデル化して自動車に取り込み、事故を回避しつつ高齢者は自分が上達した感覚で運転を楽しめ、さらに同乗者の不安を解消するようなシステムを目指す。「地方では車での移動が不可欠。最先端の賢い車で楽しく運転して、事故もない幸せな社会にしたい」と目を輝かす。

 もともと「自動車のエンジニアになれば、将来もいろいろな進路を選べそう」と、トヨタ自動車がスポンサーを務める自動車工学コースへ進学。そんな環境や日本に興味があったことに加えて、留学が決まってから参加した日本へのショートステイで同郷の先輩の楽しそうな姿を見たことが、来日の大きなきっかけとなった。そして大学4年の時に参加した特別講義で講師をしていた、いすゞ自動車の技術者の紹介で自動車制御の研究で著名な東京農工大の永井正夫教授(当時)の元へ渡った。

 博士課程を修了し、助教を務めた後「早く自分の研究室を持ちたい」と、06年度から始まったテニュアトラック制度に応募。約40倍の選考に残り、自身の城「ポンサトーン研究室」を構えた。大学2年の時から日本語学校に通っており、今では日本語もぺらぺら。プライベートでは地元の交響楽団に所属するなど、すっかり日本にとけ込んでいる。

 最近は共同研究などで、留学先の候補でもあったもうひとつの自動車大国、ドイツを訪れる機会も増えた。そこで感じるのは「日本は思っていたほど自動車工学は強くない」ということ。主要な大学や企業の工場が集まる関東はもちろん強いが、各地方の田舎都市にもビッグネームの工場や大学があるドイツに比べ、地方は必ずしもそうではない。

「各地に自動車工学を学べる拠点を置き、日本の強みである自動車産業を支える体制を作りたい」。そのためにも産学連携をもっと強化して、実のある深い議論をする必要があると考えている。

 夢はまだある。世界的な研究拠点を作り、他のアジア諸国と連携しながら、日本がリーダーシップをとって自動車研究をけん引する、という構想だ。「技術力がありチャレンジングな研究ができ、交通が世界一安全な国、日本だからできること」。“ほほえみの国・タイ”ならではの朗らかな笑顔の中に、強い意志が秘められている。
(文=ニュースイッチファシリテーター・政年佐貴恵)
(日刊工業新聞2013年12月18日 科学技術・大学面)

 <ニュースイッチ Special Events>

ニュースイッチでは日刊工業新聞社主催のスマートコミュニティJapan2015(6月17~19日)で特設ブースを設け、連日、ホットなテーマのトークイベントや講演会を行います。展示会に来て頂ければ、どなたでも自由に無料観覧できます。ポンサトーンさんが登場するのは17日(15:15-16:45)

  注目の研究者が語る「自動運転技術の最前線」
 講演者 東京農工大学大学院准教授 ポンサトーン・ラクシンチャラーンサク氏


 モデレーター 日刊工業新聞第一産業部長 藤元正(ニュースイッチファシリテーター)

 
 閲覧希望の方は、事前に下記のページからスマートコミュニティJapan2015の来場登録をお願いします。http://www.nikkan.co.jp/eve/smart/ichiran.html

 当日でも現地で来場登録は可能ですが、事前に行われた方がスムーズに入場できます。
またニュースイッチ特別ステージは椅子席を約50席ほどご用意しておりますが、早くお越しになった方から自由にお座りになれます(立ち見も可能)。会場ではニュースイッチのファシリテーターや登壇者とお時間の許す範囲でコミュニケーションをとって頂ければと思っております。

 
日刊工業新聞2013年12月18日 科学技術・大学面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ポンサトーンさんは現在、日本だけでなく海外の自動車メーカーとも産学連携のプロジェクトを進めています。ぜひ興味のある方は会場にお越し下さい。

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