ニュースイッチ

【連載】知っておきたい太陽電池のこと(第5回)「ミドルソーラー」

ポスト・メガソーラーは屋上のミニ発電所
【連載】知っておきたい太陽電池のこと(第5回)「ミドルソーラー」

ビル屋上のミドルソーラー

 今後、有望と思われる太陽光発電所を紹介します。設置を検討する方に参考にしていただければと思います。
 
 それはビルや店舗、工場、マンション、アパートの屋上・屋根を使ったミニ発電所です。業界では「ミドルソーラー」と呼んでいます。
 発電能力を示す出力(新聞によっては「容量」と表記)でいうと10キロワット以上、50キロワット未満。太陽光パネル枚数では40-200枚未満(1枚250ワットとして)。40枚を取り付けられるスペースが屋上・屋根にありますか?

 まずミドルソーラーは10キロワット以上なので発電した電力すべてを20年、同じ価格で売電ができます。10キロワット未満は住宅用の扱いなので、発電しても使い切れなかった余剰電力だけの売電で、期間は10年です。

 少し話はそれますが、「太陽光発電は儲かるんですか?」と聞かれることがあります。「儲かるはず」と答えています(約束はしていません)。固定価格買い取り制度での買い取り価格(売電価格)は、事業者が損をしないように決められているからです。よっぽど工事費が高くつくような場所でない限りは20年以内に投資回収ができるはずです。
 2015年度の認定であればミドルソーラーで発電した電力は1キロワット時当たり29円で電力会社に売れます(6月30日の認定分まで)。この価格はメガソーラーも同じです。参考までにビルだと電力料金は1キロワット時15-20円(業務用電力)。単純比較はできませんが、太陽光の買い取り価格はまだ高めです。

 他にもミドルソーラーのメリットがあります。50キロワット以上になると電力系統(電線)に送電する設備が大型になります(高圧連係のための昇圧機が必要)。49キロワットまでなら住宅用太陽光発電システムの設備の転用も可能です(ただし需要家の契約電力などによって違う)。太陽電池メーカーもミドルソーラーには住宅用太陽光パネルを提案しています。住宅用なら工事手順が標準化されているため、地元の工務店も設置ができます。整地の必要もないので工期も短いです。

 また50キロワット未満は電気事業法上の発電所に該当しないため管理が緩やかになり、電気主任技術者の置くなどの義務がありません。太陽光パネルが日射を遮るので屋上の温度上昇が抑えられてエアコン代が浮く効果も期待できます。

 整理するとミドルソーラーは「全量・20年」の売電ができ、設置コストが抑えられそうで、しかも設置後の管理も比較的、手間がかからないというメリットがあります。

 20年の売電期間終了後もミドルソーラーは活躍できます。ビルや店舗であれば電力の消費が増えるのは日中です。太陽光パネルも日中が発電のピークです。売電をやめ、発電した電力をビルや店舗で使うと日中の電力購入を抑えられ、電力料金の節約なります。太陽から請求書が届くことはないので作った電力はいくら使ってもダダです。しかも電力の消費と発電のタイミングが合うので、発電した電力を夜間に使うために蓄電池を置く必要もないです。

 21年目からは売電をしなくても自家消費で経済的メリットを得られると考えられます。震災後、業務用電力は30%値上がりしました。今後も上昇するはずで、太陽光由来電力を活用するメリットが大きくなると思います。


 固定価格買い取り制度の見直し、電力システム改革、エネルギーミックスと温室効果ガス排出削減の新目標など、エネルギー関連の政策がめまぐるしく変わります。太陽光発電の位置づけも変わっていくはずです。メガソーラーは目立ってお金も稼いでくれます、しかし確実な普及を担うのは住宅用やミドルソーラーだと思っています。国にも住宅用とミドルソーラーの普及支援を継続してほしいです。

(連載終わり)
ニュースイッチオリジナル
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
やさしい内容の連載にするはずが、マニアックになりました。字数に制限がある新聞と違い、長文にもなってしいました。

編集部のおすすめ