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三菱電機のスマートコミュニティー事業をけん引するイタリア人リケジョ

山西会長が標榜する“異種の知”の先駆者は原子力の専門家
三菱電機のスマートコミュニティー事業をけん引するイタリア人リケジョ

マルミローリ・マルタさん

 「最適需給調整技術」「最適潮流計算技術」…。電力流通第一グループマネージャーのマルミローリ・マルタは、舌をかみそうな専門用語を使ってスマートグリッド(次世代電力網)を解説する。「難しい日本語の方が読めるんです」。ショートヘアを触りながら照れくさそうに話す。

 【やりたいことを】
 イタリアの出身。女性でありながら大学で原子力を学んだ。1996年の卒業後は原子力発電関係で働くつもりでいたが、反原発の世論が台頭。母国での就職を諦め日本に渡った半年後に三菱電機への就職を決めた。日本には原発プラントメーカー、原発を運転する電力会社が多い。原発関連機器を扱う三菱電機を選んだのは「面談者に『やりたいことを研究していい』と言われたから」。

 入社した97年当時、日本で働く外国籍の社員は珍しかった。「電力会社で英語で営業したら相手がちょこんとしていた」と笑って振り返る。言葉以外に日本食にも苦労したが、担当に縛られずに幅広く研究できることにやりがいを感じて仕事に没頭できた。

 電力の小売りが自由化された00年、メンバーの一人として電力会社や新電力(PPS)が電力を融通する入札システムを開発した。現在の日本卸電力取引所のシステム開発にも参加。海外からやって来た“リケジョ”が日本の電力自由化を担った。

 【いいメンバー】
 いまは15年以降の完全自由化を見据え、スマートグリッドの開発に打ち込む。天候で発電量が変わる再生可能エネルギーが入り込み、参入者も増えるのでシステムは複雑化する。それでも「いいメンバーに恵まれている」と言い、チームでの開発に熱が入る。

 すでに三菱電機として成果が出ている。3月、風力発電が導入された長崎県・壱岐島の電力系統を支える大型蓄電池システムを九州電力に納入した。風力の発電量に合わせて充電、放電を素早く切り替える蓄電池の制御技術が生かされた。

 マルタは欧州よりも優れたスマートグリッド技術が日本にあると確信する。しかし技術を束ねた最適なシステムづくりは日本企業の課題。日本の長所も短所も知るマルタのチームは「異種の知」の象徴。最適なシステム開発でスマートグリッド市場でのリードを狙う。(敬称略)
2013年10月22日 電機・電子部品・情報・通信面(挑戦する企業・三菱電機編より)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
2年前に三菱電機の長期連載をした。保守的なイメージもあるが、人材という意味では懐が深いというか多彩である。しかしまだまだ女性の幹部は少ない。女性登用の数値目標を置くことが必ずしも良いとは思わないが、三菱電機が目標とする売上高5兆円の達成は、ダイバーシティーが欠かせない。

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