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老舗サーフブランド「BODY GLOVE」を擁してもカジュアルウエア不況に勝てず

帝国データバンク情報部の追跡レポート。アートヴィレッヂが破たんしたマーチャンダイジングの機能不全
 アートヴィレッヂは1975年設立の老舗カジュアルウエア販売業者。「BODY GLOVE」などのサーフブランドを擁し、当初は主に量販店向けに卸売りを手がけていた。01年には小売業にも進出し100店舗以上の規模に拡大した。その間、09年2月期に売上高約99億円と100億円の大台をうかがう水準まで伸長した。

 長らく続いたデフレ経済でカジュアルウエアの市況は低迷し、急速な規模拡大は収益を圧迫した。同社と取引のあったある業者は「カジュアルゾーンが厳しい中で売り上げを作るため出店した結果、在庫や人件費、借り入れ負担が増加した」と分析する。

 11年2月期には、設立以来初の赤字に転落。売上高も約77億円に減少した一方、在庫は約19億円と約5年で4倍弱に増加した。こうした状況を前述の取引先は「売り上げが減っているにもかかわらず在庫が増えているというのは異常。MD(マーチャンダイジング)が機能していなかったといってよい」と断じる。

 そこへ追い打ちをかけたのが東日本大震災。店舗被害や計画停電による販売機会喪失などで業績はさらに悪化。リストラによる再建計画を断行したほか、金融機関に対して返済の猶予も要請。それでも業績は回復せず、14年2月期は売上高約41億円に減少。赤字が続き、債務超過額は20億円近くに達した。

 賃貸契約が満了したいくつかの店舗では、再契約を拒否される事態が発生。売り上げは減少し、在庫の現金化を目的としたセールも多くなったことで収益を圧迫し、さらなる資金不足を招くという悪循環に陥っていた。

 ブランド存続に向けた選択肢は法的整理しか残されておらず、4月に東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。今後は、スポンサーを募って事業譲渡することで弁済原資を確保、ブランドとしては残るものの法人としては清算される見込み。

 流行に乗って規模を拡大させるアパレルは多いが、売り上げ増加がとまった途端、業績は急速に巻き戻しをはじめる。ポイントは売上高の推移と借入金、在庫のバランスだ。アートヴィレッヂのケースは、数年前にその兆候が表れていた

 <企業概要=(株)アートヴィレッヂ>
 住所:東京都墨田区石原4の15の4
 代表:赤池 輝子氏
 資本金:5000万円
 年売上高:約41億5100万円(2014年2月期)
 負債:約40億7500万円

 ※日刊工業新聞で毎週火曜日に「倒産学」を連載中
日刊工業新聞2015年06月09日 ひと&会社面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ユニクロや海外のファストファッションが日本に相次ぎ上陸し、この5年ほどでカジュアルウェアの市場は一変した。あのアバクロンビー・アンド・フィッチ(アバクロ)も赤字が続いている。

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