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アマゾン・ロボティクス・チャレンジ、日本勢が“地元開催”で雪辱戦に燃える

第三回は名古屋で開催、三菱電機などが参加
アマゾン・ロボティクス・チャレンジ、日本勢が“地元開催”で雪辱戦に燃える

アマゾン・ロボティクス・チャレンジ

 米アマゾン・ドット・コムグループが主催する「アマゾン・ロボティクス・チャレンジ」(用語参照)は、自動化が難しいピッキング作業の技術を競う競技会だ。2015年から毎年開催し、第3回は7月27日から30日まで名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや、名古屋市港区)で行われる。初回から参加している三菱電機、中部大学、中京大学のチームは“地元開催”での優勝に意欲を燃やす。

AIとロボ技術 すり合わせ入念に


 三菱電機などのチームは、前回大会では取り出し作業で8位、収納作業で11位と振るわなかった。三菱電機先端技術総合研究所の鹿井正博センサ情報処理システム技術部長は敗因を「3者のすり合わせの時間が足りなかった」と分析する。

 ピッキング作業に必要なアームの制御や画像認識といったロボットの要素技術は他チームと比べて遜色なかった。だが、中部大、中京大が磨き上げた人工知能(AI)による画像認識技術と三菱電機のロボット関連技術をシステムにまとめるところが時間不足になったという。

 そこで、今回はすり合わせに時間をかける。前回は開発期間が約5カ月。今回はより多く時間を取る。同研究所の関真規人センサ情報処理システム技術部画像認識システムグループマネージャーは「海外大会と違いロボットの輸送時間が短い分、開発に時間をかけられる」と地元開催の優位性も生かしていく。

問われる対応力


 海外の大学主体のチームは、競技のルールを上手に解釈し目的にかなったシステムを作り上げていく。日本のチームでも、前回上位に入ったAIベンチャーのプリファード・ネットワークス(東京都千代田区)には「うなるような発想があった」(関マネージャー)。大会ではこうした違いやすごさを肌で感じられるという。

 競技では直前になってピッキング対象商品が追加され、アドリブ的な対応力が問われる。また、今回は商品を入れる棚も参加者が作るため、作業の自由度が増えてより大胆な発想が生かされるようになった。

 柔軟さと大胆な発想は海外チームやベンチャー企業が得意とするところ。そのため大会の現場で感じたものと三菱電機の良さを組み合わせていくことが上位に食い込むため必須となる。

 前回の成績は下位だったものの画像認識の精度と商品の扱いが「紳士的」という会場の評価を受けた。チームの良さやロボットメーカーとしてのノウハウを新たなアイデアとの組み合わせでさらに良いものにできれば勝因はある。20人以上が関わるというチーム全員が「何とか優勝したい」という意気込みで競技に挑む。
【用語】
 アマゾン・ロボティクス・チャレンジ=ロボットアームが箱から不定形物を取り出すピッキング作業の技術を競う国際大会。競技は二つで、商品を箱から取り出して棚に入れる「ピック(取り出し)」と棚から商品を取り出して箱に入れる「ストウ(収納)」がある。
 商品の種類は約50種。ロボットは一定の時間内に取り出しと収納に成功した商品数によって採点される。1回目は米シアトル、2回目はドイツのライプチヒで開かれた。名古屋の大会は日本からの4チームなど16チームが技術を競う。優勝チームは最大25万ドルの賞金を手にする。

日刊工業新聞2017年5月31日
石橋弘彰
石橋弘彰 Ishibashi Hiroaki 第一産業部
 アマゾンの大会を通じて、ロボットの技術力は飛躍的に向上しているようだ。やはり、ロボットが社会に普及するに足る技術を得るには、コンテストで競うやり方は効果がある。ロボットのユーザー側にも、積極的にコンテストを仕掛けるような攻めの姿勢がほしい。

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