意外に根強い国内パソコン需要、法人向け堅調で今年度も1000万台超え
政府の教育市場導入と働き方改革が後押し
MM総研(東京都港区、中島洋所長)は24日、2016年度の国内パソコン出荷台数が前年度比2・1%増の1011万2000台だったとする調査結果を発表した。13年度にあったウィンドウズXP搭載機の更新需要に伴う反動減の影響がおさまり、法人向け出荷が回復した。
流通ルート別では、個人向けルートが同7・9%減の396万8000台、法人向けルートが同9・8%増の614万4000台。減少が続く個人需要を法人需要が支える格好となった。
メーカー別シェアの首位はNECレノボで同1・5ポイント減の25・6%。2位の富士通は同0・9ポイント増の18・1%、3位の日本HPは同1・6ポイント増の13・0%だった。出荷金額は同0・4%減の8704億円。出荷平均単価は同2000円安い8万6000円だった。
MM総研は17年度の出荷台数を同4・5%増の1057万台と、引き続き回復局面に向かうと予想した。
パソコン各社が「働き方改革」を支援する提案を積極化している。オフィスの外で働くことを想定してセキュリティーや軽量性を高めた製品や、会議を効率化する機能などを付加した製品を相次ぎ発表した。国内の法人市場は減少に歯止めがかかり始めており、買い替え需要を喚起できるか注目される。
富士通クライアントコンピューティング(川崎市中原区)の齋藤邦彰社長は、2017年の新製品群について「いつでもどこでも安心して使えることを意識した」と話す。13・3インチ型ノートパソコン「ライフブックU937/P」は800グラムを切る軽量さと、約200キログラムの圧力に耐えられる頑丈さを両立。手のひら静脈認証や、紛失時に遠隔操作でデータを消去する機能などを組み合わせて提供する。
また手のひらサイズのタブレット端末「アローズタブV567/P」には、パソコンと同じ基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のフルバージョンを搭載した。顧客の業務システムなどを容易に導入することが可能だ。齋藤社長は「総力を挙げて開発した」と自信を語り、市場の伸びを上回る拡大を目指す。
レノボ・ジャパン(東京都千代田区)は、主力のノートパソコン「シンクパッド」シリーズを働き方改革のツールとして提案する。旗艦モデル「シンクパッドX1カーボン」は、14インチ画面ながら額縁をより狭くし、13インチ型パソコンと同等の大きさに収めた。炭素繊維を使い、耐久性を維持しながら小型化した。「持ち運びやすいだけでなく、見やすさも犠牲にしていない」(広報担当者)。
一方、軽量化については競争が激化している。個人向け13・3型ノートパソコンで富士通が777グラムのモデルを投入したのに対し、レノボ傘下のNECパーソナルコンピュータ(東京都千代田区)が769グラムのモデルを発売し世界最軽量を争う。またパナソニックはキーボードを着脱できる「レッツノートXZ」で、1019グラムを達成した。
およそ3年前、OS入れ替えに伴い特需が発生したが、その後は需要が低迷していた。ただ一部の関係者の間では、買い替え需要が近づき、17年度の法人市場は平時の600万―700万台に回復するとの見方もある。
日本HP(東京都江東区)の岡隆史社長も需要の回復を期待する。「働き方改革で、パソコン業界にチャンスが来る」(岡社長)と分析しており、オフィスの外で働くための安全設計に加えて、ボタンを押すだけでテレビ会議に参加できるコラボレーション機能が付いた製品も用意した。
また、HPは頑丈さが特徴だったが、この10年間で64%薄く、39%軽くなり、スマートなデザインを追求するようになった。見た目の良さを求める声が強まっているためだ。「ヒットの予想は難しい。だからこそ、いろいろな面白いものを出す」(岡社長)という。
働き方改革を契機に新たな需要が生まれつつあり、市場の深耕に向けて各社の知恵と工夫が試される。
(文=梶原洵子)
流通ルート別では、個人向けルートが同7・9%減の396万8000台、法人向けルートが同9・8%増の614万4000台。減少が続く個人需要を法人需要が支える格好となった。
メーカー別シェアの首位はNECレノボで同1・5ポイント減の25・6%。2位の富士通は同0・9ポイント増の18・1%、3位の日本HPは同1・6ポイント増の13・0%だった。出荷金額は同0・4%減の8704億円。出荷平均単価は同2000円安い8万6000円だった。
MM総研は17年度の出荷台数を同4・5%増の1057万台と、引き続き回復局面に向かうと予想した。
日刊工業新聞2017年5月25日
パソコン各社、頑丈・軽量・安全を訴求
パソコン各社が「働き方改革」を支援する提案を積極化している。オフィスの外で働くことを想定してセキュリティーや軽量性を高めた製品や、会議を効率化する機能などを付加した製品を相次ぎ発表した。国内の法人市場は減少に歯止めがかかり始めており、買い替え需要を喚起できるか注目される。
富士通クライアントコンピューティング(川崎市中原区)の齋藤邦彰社長は、2017年の新製品群について「いつでもどこでも安心して使えることを意識した」と話す。13・3インチ型ノートパソコン「ライフブックU937/P」は800グラムを切る軽量さと、約200キログラムの圧力に耐えられる頑丈さを両立。手のひら静脈認証や、紛失時に遠隔操作でデータを消去する機能などを組み合わせて提供する。
また手のひらサイズのタブレット端末「アローズタブV567/P」には、パソコンと同じ基本ソフト(OS)「ウィンドウズ10」のフルバージョンを搭載した。顧客の業務システムなどを容易に導入することが可能だ。齋藤社長は「総力を挙げて開発した」と自信を語り、市場の伸びを上回る拡大を目指す。
レノボ・ジャパン(東京都千代田区)は、主力のノートパソコン「シンクパッド」シリーズを働き方改革のツールとして提案する。旗艦モデル「シンクパッドX1カーボン」は、14インチ画面ながら額縁をより狭くし、13インチ型パソコンと同等の大きさに収めた。炭素繊維を使い、耐久性を維持しながら小型化した。「持ち運びやすいだけでなく、見やすさも犠牲にしていない」(広報担当者)。
一方、軽量化については競争が激化している。個人向け13・3型ノートパソコンで富士通が777グラムのモデルを投入したのに対し、レノボ傘下のNECパーソナルコンピュータ(東京都千代田区)が769グラムのモデルを発売し世界最軽量を争う。またパナソニックはキーボードを着脱できる「レッツノートXZ」で、1019グラムを達成した。
およそ3年前、OS入れ替えに伴い特需が発生したが、その後は需要が低迷していた。ただ一部の関係者の間では、買い替え需要が近づき、17年度の法人市場は平時の600万―700万台に回復するとの見方もある。
日本HP(東京都江東区)の岡隆史社長も需要の回復を期待する。「働き方改革で、パソコン業界にチャンスが来る」(岡社長)と分析しており、オフィスの外で働くための安全設計に加えて、ボタンを押すだけでテレビ会議に参加できるコラボレーション機能が付いた製品も用意した。
また、HPは頑丈さが特徴だったが、この10年間で64%薄く、39%軽くなり、スマートなデザインを追求するようになった。見た目の良さを求める声が強まっているためだ。「ヒットの予想は難しい。だからこそ、いろいろな面白いものを出す」(岡社長)という。
働き方改革を契機に新たな需要が生まれつつあり、市場の深耕に向けて各社の知恵と工夫が試される。
(文=梶原洵子)
日刊工業新聞2017年2月24日