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SUBARUブランドの「軽」はまだ売れるのか

ダイハツからのOEMで「プレオプラス」投入
SUBARUブランドの「軽」はまだ売れるのか

スバルの原点でもある「スバル360」

 SUBARU(スバル)は、運転支援機能が向上した軽自動車の新型「プレオプラス」を発売した。軽として初めて四つのコーナーセンサーを搭載。後進時に歩行者や障害物の接近を知らせる機能を付けた。センシング方式をレーザーレーダーからステレオカメラに変更し歩行者や物の認識精度を高めた。価格は消費税込みで89万6400円から。月販600台を計画する。

 同車はダイハツ工業からOEM(相手先ブランド)供給を受けている。スイッチ式のリヤゲートオープナーを採用しており、ワンタッチでロックが解除されるなど、荷物を持ったままでリヤゲートを開けられる。高張力鋼板の採用拡大や燃料タンクの素材を鉄から樹脂に変更。最大で80キログラム軽量化して実用燃費を高めた。
新型軽「プレオプラス」 


「本当にやめていいのだろうか。毎日眠れなかった」


 「本当にやめていいのだろうか。毎日眠れなかった」。08年4月、軽自動車の自社開発・生産をやめる方針を発表するまでの日々について、吉永泰之社長は振り返る。当時の森郁夫社長の下で経営戦略や国内営業を担当していた。

 同社が最初に世に送り出した自動車は58年発売の軽「スバル360」だ。車メーカーとしての出発点である軽からの撤退は同社にとって苦渋の決断だったといえる。

 だが、開発資源が限られる中で水平対向エンジンをはじめとする独自技術が生かせる登録車の開発で生きる道を選んだことが、現在の快進撃につながっている。
 
 昨年11月、スバル総合研修センター(東京都八王子市)では車のアフターサービスの技能を競う大会が開かれていた。販売店の幹部や社員に交じり戦いぶりを熱心に見ていたのは吉永社長だった。予定では開会あいさつ終了後に退席するはずだったが観戦は試合終了間際まで続いた。

 「車を買っていただいた後の(顧客)対応が最も大切」。吉永社長がこう強調するのは近年ブランドイメージが向上しいわゆるスバル車の熱狂的ファンである「スバリスト」以外にも顧客層が広がったからだ。

 トヨタ自動車ホンダ、米フォード―。従来はほとんど関心がなく他銘柄に乗っていた人がスバル車の商品力を認め乗り換える事例が増えている。

 北米営業担当の早田文昭執行役員は「昔ながらのサービスのやり方を続けていたら他銘柄を知る目の肥えた顧客は納得しない。レベルを上げないと成長は止まってしまう」と指摘し、拡大局面が続く北米事業の課題に挙げる。

 早田氏は米販売会社のスバルオブアメリカと連携して全米ディーラーの店舗刷新や教育サポートを重点的に進めてきた。日本でも同様の取り組みが進む。サービス向上を目指し新たな教育制度を導入するとともに、全国に460ある販売店の改装に着手し主力車種を展示するショールームや顧客との商談スペースを拡張した。

 店舗によっては建て替える。販売店の中にはかつてスバルの軽自動車販売が全盛期だったころのままになっている古い店舗があり現在の主力車「インプレッサ」や「レヴォーグ」「フォレスター」などを並べるには窮屈だった。

 「そろそろスバル車がブレークし始めた頃に車を購入した方の乗り換え時期がやってくる」。早田氏はハードとソフトの両面でサービスの質を高める戦略づくりに余念がない。

 商品力に加えサービスでも顧客の心をつかみ、リピーター獲得につなげていけるのか。その中で「軽」の位置付けはどうなるのか。「新生スバル」の戦いはこれから始まる。

日刊工業新聞2017年5月17日の記事に加筆修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
スバルは3年かけて全国の販売店を順次改装しています。主力車種を展示するショールームや顧客との商談スペースを拡張、店舗拡張や建て替えにより登録車を3台程度おける、ゆとりのある空間づくりを目指す取り組みです。軽の肩身は狭くなりそうですが、自動車のエントリーユーザーとの接点として品揃えとしては欠かせないのでしょう。うちの実家では長く富士重製の軽商用車「サンバー」を愛用してました。サンバーも名車だと思います。

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