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ジャパンディスプレイが3期連続赤字に。「フレキシブル液晶」もくろみ崩れる

アイフォーンの有機EL採用が決定打に。戦略見直しは必至
ジャパンディスプレイが3期連続赤字に。「フレキシブル液晶」もくろみ崩れる

JDIの曲げられる新型液晶

 ジャパンディスプレイ(JDI)が岐路に立たされた。1日、2017年3月期連結決算の当期損益が、317億円の赤字になる見通しを発表。掲げてきた「当期黒字の必達」は守れず、3期連続の当期赤字に陥る。不振の大きな原因は、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーの台頭だ。スマートフォンへの採用が想定以上に加速し、収益を圧迫している。10日に決算発表を控えるが、戦略の見直しは避けられない。

 米アップルが年内に発売するスマホ「iPhone」に、有機ELパネルを採用するとの観測が高まっている。これを受けて「有機ELの波が勢い付いている」(関係者)とされる。

 調査会社の米ディスプレイサプライチェーンコンサルタンツの田村喜男アジア代表は、スマホ向け有機ELパネル市場の勢いについて「生産能力の分だけ成長する。

 19年には有機ELパネル市場が液晶に拮抗(きっこう)する。21年にはスマホ向けパネル市場での有機EL比率が60%に達する」と指摘する。

 JDIが有機ELの対抗軸として打ち出したのが、フレキシブル液晶パネルの「フレックス」だ。17年に入り、顧客への提案活動を強化している。

 有機ELパネルの量産試作は手がけながらも次世代液晶パネルで収益基盤を確保し、有機ELは顧客からの引き合いを見ながら慎重に量産へ持ち込む計画だった。

 フレックスの性能は優れており、当初は「戦略としては正解」(業界アナリスト)とされていた。だが、そのもくろみは崩れた。JDI内部では「有機ELの事業化を急がねばならない」との認識が広がっている。

 6月下旬には印刷方式の有機ELディスプレー開発を手がけるJOLED(東京都千代田区)の東入来信博社長が、JDI社長兼最高経営責任者(CEO)に就任。12月にはJOLEDを子会社化する予定だ。

 JDIは現在、経営体制の刷新に合わせて中期経営計画の見直しを進めている。そこには有機ELパネルに注力する方針が盛り込まれる公算が大きい。

 計画には新たな構造改革も盛り込まれる可能性がある。難局を乗り越えるためにも、新体制では事業環境の変化に対応する経営スピードが求められる。
             

(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2017年5月10日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
当期赤字の直接の要因は繰延税金資産の取り崩しだが、その背景に有機ELの台頭がある。16年4-12月期の決算では当期黒字化の可能性も見えていたのに加え、個人的にはフレキシブル液晶での逆襲を期待していたので残念だ。(やはり単純に性能や機能だけでの勝負ではないのだな・・・)今後は次世代液晶への取り組みは続けるものの、比重は蒸着式有機ELに傾けざるをえないだろう。JOLEDが手がける印刷式有機ELとのバランスをどうするかも課題。東入来新社長はどう采配するのか。

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