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イオンが本気になった地方分権の現場で今、何が起こっているのか?

3期連続の減益要因は「地域」視点が足りず。鮮魚の仕入る漁港を倍増させた中四国カンパニー
イオンが本気になった地方分権の現場で今、何が起こっているのか?

イオンリテール岡山店の外観

 イオンは今年から本格的な“地方分権”を進めている。グループの中核企業で総合スーパー(GMS)を運営するイオンリテールはこれまで本部が主導した商品政策を展開してきたが、商品仕入れや開発、人事など重要な権限を全国の地区カンパニーに下ろし、各地域の裁量で運営できる体制にした。カンパニー支社長には「イオンの精鋭をそろえた」(イオン関係者)といわれるが、この地方分権の現場で改革の先端を行く中四国カンパニーのケースをみてみた。

 「やはり取りこぼしていたニーズがあると思う」。イオンリテール取締役専務で中四国カンパニー支社長の山口聡一氏はこう指摘する。山口支社長は就任以降、店舗を巡回して課題を確認した結果の感想だ。イオンリテール全体で約2兆1000億円ある売上高も、地域単位に分解すると地域2番手、3番手という順位に甘んじている地域もあるという。

 チェーンストアは本部が仕入れた商品、本部が考えた商品政策を地域の店舗は付き従うというのが一般的だ。しかし、この結果として本部からは見えない地域のきめこまかいニーズがとらえ切れていなかったのもまた事実である。イオンは前期(2015年2月期)まで3期連続の減益となった。減益の理由はいくつかあるが地域という視点が足りなかったのも、業績に影響しているのは確かだ。

 大手チェーンストアではイオンだけでなく、セブン&アイ・ホールディングス傘下のイトーヨーカ堂も今年から店舗を主、本部を従という改革に乗り出している。時を同じくして2強が同じ改革に乗り出したのは、従来の本部主導の運営体制が限界に来た現れといえる。

 イオン中四国の地域対応の深耕はすでに始まっている。中四国の管轄範囲は山陰、山陽、四国の計9県だが、まず生鮮食品の仕入れエリアを細分化し、バイヤーの要員を増やす改革の乗り出している。たとえば鮮魚では仕入る漁港を従来比で倍増した。店舗に近いところで仕入れられるようにし一段と鮮度の高い鮮魚を販売する体制を敷く。

 改革の焦点はこうした仕入れ体制もあるが、やはり重要なのは地域を反映した商品政策と地域ならでは行事へのプロモーション施策だろう。たとえば商品政策では「地域の食品スーパーなどを調査し、店舗で展開できていないものを確認し品揃えに反映させる」(山口氏)という。

 その上で調味料や乾物、さらにセルフの総菜などは6~7割が地域を反映した商品にする見込みだ。販促策面でも地域対応の地酒の折り込みチラシを投入するなど、地域色を反映したものとしたという。

 今後はイオンの傘下に入った地域のスーパーであるマルナカ、山陽マルナカ、さらにマックバリュ西日本と共同で“中四国経済圏”を結成、商品の共同仕入れや物流の共同化、行政への対応、さらに電子マネーの「ワオン」を軸とした共同の販売促進策などを展開、地域としてのスケールを最大限に引き出しいく考えだ。

 もちろん、これまで品揃えがなかったり、地域にフィットした販促策を展開していなかったために取りこぼしていた顧客を引きつけるのは、一朝一夕にはできない。しかし、全国規模で地方分権の効果が出てきた時に、イオンの売り場、さらに業績が劇的に変わっているかもしれない。
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