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軽作業用の双腕型ロボットがモテモテの理由。新型機種が続々!

プログラミングが容易、安価で導入ハードルが低く、人と協調しお手伝いできるお手軽感
軽作業用の双腕型ロボットがモテモテの理由。新型機種が続々!

川崎重工業の双腕型スカラロボ

 人と共存して働く「軽作業ロボット」が注目を浴びている。自動車の溶接など決まった作業を高速・高精度で繰り返す従来の産業用ロボットとは異なり、能力的には人と大差ない簡易的な仕様。人の手助けや欠員補充などが役目だ。プログラミングが容易で価格も比較的安いため、導入のハードルはそれほど高くない。簡単な搬送や仕分けなどの担い手として熱い視線を集めている。国によるロボット導入支援施策や人手不足などにより、今後活躍の場が増える可能性がある。
 
 軽作業ロボットで代表的なのが、デンマークのユニバーサルロボットが手がける「UR」シリーズだ。単腕6軸型で円筒状のアームや関節部などからなるシンプルな外観。人などが接触すると自動で減速・停止する独自の安全機能を特徴とし、柵を設けず人と同空間で運転できる。独BMWが組み立て工程の接着剤塗布などに採用していることで知られる。

 最大旋回速度は毎秒180度と同クラスの平均値以下だが、そもそもスピードは重視していない。人と同等の速さで動かし共同作業させるのが目的だからだ。日本でも自動車関連などで採用が進みつつあり、2014年は前年比約50%増の実績を記録。15年も好調を維持する見通しだ。

 これに似たコンセプトを持つのが米リシンク・ロボティクスの「バクスター」。各腕7軸の双腕型で、顔を模したディスプレーを搭載するユニークな外見が話題を呼んでいる。こちらも速度や精度は人の能力を大きく上回らない仕様。人が両手で行っていた仕事をそのまま置き換えることを念頭に設計されている。

 ここ1年前後で日本企業から問い合わせが急増。これまで日本向けは研究機関への販売が中心だったが、「今年は企業向けが大きく伸びる」と代理店である日本バイナリー(東京都港区)の吉水瑞晴社長は期待する。

 両者に共通するのが導入しやすさだ。いずれも人が直接アームを動かし動作軌跡を設定するダイレクトティーチング機能付き。複雑なプログラミングなしでロボットを動かすことができる。また、従来の産業用ロボットと比べ周辺機器などを含めたトータルコストが安く、配線も単純なため導入のハードルは低い。「システム立ち上げは1日で済むケースが多い」(ユニバーサルロボット関係者)という。

 キャスターなどにより容易に移動できるのも両者の特徴だ。生産状況などに応じ柔軟に活躍の場を変えられる。例えば食品の仕分け工程。人が並ぶラインに応援要員として参加できる。繁忙期や欠員発生時の強力な味方になりそうだ。

 こうした軽作業ロボットは海外製が中心。市場性が不透明なこともあり、国内ロボット大手が参入するまでには至っていない。だが、国のロボット導入支援施策が予定されていることもあり、可能性は広がっている。特に今後の新規ユーザーとして期待される中小企業にとって、ロボットの導入しやすさは重要だ。それだけに、市場を活性化させる国内ベンチャーの台頭に期待がかかる。
 
 川崎重工業、双腕型スカラロボを発売
 川崎重工業は3日、人との共同作業に対応した双腕型スカラロボット「デュアロ」を発売した。低出力モーターや接触時の自動停止・減速機能などを採用し、作業者の安全性を確保できるようにした。容易に移設できる可搬型で、ライン変更などに柔軟に応じられるのも特徴だ。価格は280万円程度。アーム2本を擁する双腕型で、電気電子分野の組み立てなど人が両手で行う作業の自動化を提案する。



 水平方向への高速動作が可能なスカラ型アームを2台連結し、一体化した。基板搬送、端子挿入といった電気電子関連の組み立て工程のほか、自動車、食品分野などでの利用も見込む。最大可搬質量は片腕で2キログラム。

 搭載するセンサーの働きで人などと接触すると停止する仕組み。また、アームが人に近づくと減速する設定も可能だ。設置サイズは620ミリ×610ミリメートル。人と同等の専有スペースにし違和感なく共同作業できるようにした。キャスター付きで簡単に移設できる。

 双腕型の産業用ロボットは川田工業の「ネクステージ」や米リシンク・ロボティクスの「バクスター」などが知られるが、スカラ型は珍しい。橋本康彦執行役員ロボットビジネスセンター長は「(双腕であるため)省スペース化でき、アーム同士が干渉する心配もない」としている。

 ABB、双腕型産業用ロボットを投入
 スイスのABBは人との共同作業が可能な双腕型産業用ロボット「ユミ=写真」を投入した。予期せぬ衝撃を感知した場合1秒以内で停止し、作業者の安全を確保する仕様。スマートフォンなど電子機器の製造における搬送、組み立てといった作業での採用を狙う。

 このロボットは2本のアームを備え、人が担っている作業をそのまま置き換えることを想定する。表面をパッドで覆っており、接触時の衝撃を吸収可能。カメラを装備し、ワークの位置などを認識できるのも特徴だ。アーム部分などを直接動かしてプログラミングできるダイレクトティーチング機能付き。ABBは日本市場に年末から2016年初めにかけての投入を計画している。
日刊工業新聞2015年02月26日 /04月17日/06月04日機械・ロボット・航空機面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
セイコーエプソンも双腕型ロボット開発中で早ければ2年以内に投入するという。製造業全体で多品種少量、生産の複雑化が進む中で今後、市場が広がる余地は大きい。IoTとの親和性も高いだろう。

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