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日の丸コンテナ新会社、運航船腹量150万TEUで世界に挑む

7月発足へ。コンテナ事業なき海運3社は組織再編迫られる
日の丸コンテナ新会社、運航船腹量150万TEUで世界に挑む

統合効果の最大化には拠点の位置もカギ(商船三井の米ロサンゼルスのコンテナターミナル)

 日本郵船商船三井川崎汽船の海運大手3社がコンテナ船事業を統合した新会社が7月に発足する。売上高2兆円、運航船腹量150万TEU(1TEUは20フィートコンテナ)と国内最大の海運会社となる。新会社は厳しい海運市場で勝ち残るため、年間1100億円の統合効果創出を掲げ、3社のリソースから最適なものを採用する「ベストプラクティス」を追求する方針だ。一方で、主力のコンテナ船事業を切り出す3社は、組織再編に迫られている。

 日本郵船の内藤忠顕社長は3社の事業統合が実現した背景を「海運業界はこれまでにも統合を繰り返しているし、同じ船にも乗り合ってきた。気心が知れている」と話す。

 日本の海運会社は1964年に再編を断行。大手6社体制となったが、89年には5社となり、99年に現在の大手3社体制にまで再編した。
                      

 こうした歴史を経て、日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社は、4月に発足したコンテナ定期船会社による国際的なアライアンス「ザ・アライアンス」への加盟を決めた。

 この協議の最中、同じくザ・アライアンスへの加盟を目指していた韓国の海運最大手、韓進海運が経営破たん。「コンテナ船は規模と効率が大事。100万TEUはないと戦えない」(内藤社長)という共通認識が、3社を事業統合に向かわせた。

 3社は7月の統合会社発足に向け、各国の独占禁止法の除外承認を得るための作業を進めている。当初は3月末に完了する計画だったが、想定より時間がかかっている。

 だが、会社名や拠点、人事など、新会社の概要は当初の計画通り5月中に公表する方向だ。新会社の社名は広告代理店に依頼し、複数案から3社の社長が総意で決定する。商船三井の池田潤一郎社長は「社名はまさにブランド。マーケットに何をアピールするか、非常に重要」と話す。

合理化が必須


 年間1100億円の統合効果を創出するためには、組織再編や各社で重複しているサービスの統合など、合理化が必須だ。コンテナ船のコストは船の建造や運航だけでなく、ターミナル運営や内陸のトラック輸送なども含めて多岐にわたる。これを一つ一つ比較し、選び取る作業を進めている。

 内藤日本郵船社長は「自分たちで判断せず、コンサルティング会社など第三者に見てもらい、いいとこ取りをしたい」と話す。

 日本郵船は空のコンテナを減らし、コストを削減する「イーグル」という取り組みを推進しており、「まだ最終決定ではないが、採用されるのでは」(内藤社長)と意気込む。

 3社は世界各地で約20カ所のコンテナターミナルを運営しているが、これも合理化の対象だ。商船三井は米ロサンゼルスをはじめ、世界各地のコンテナターミナルに自動荷役システムを導入するなど、積極的に投資してきた。

 「ロサンゼルスも使えるアセットだし、ベトナム・ハイフォンは他を寄せ付けない競争力がある。新会社の力になる」(池田商船三井社長)と自信をみせる。

 統合効果を最大化するには、拠点をどこに置くかもカギとなる。現在、日本郵船はシンガポール、商船三井は香港、川崎汽船は日本に拠点がある。

 三つの拠点からベストプラクティスを選択することになるが、池田社長は「人材確保」をポイントに掲げ、「現地法人の営業はローカルの人材がやる方がよい。トップのコネクションやネットワークを活用することで、会社は強くなれる」と話す。

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日刊工業新聞2017年4月21日「深層断面」
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
日本の海運大手3社では、海外現地法人のトップをコンテナ船のトップが兼任するなど、コンテナ船事業が海外ネットワークの基盤となっています。今後、コンテナ船が抜けた穴をどう埋めて、組織を再編成するのかは課題です。組織だけでなく、売り上げも大きく下がりますので、コンテナ船に代わる柱をどのように育てていくか、これも課題となります。

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