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「亜鉛二次電池」はリチウムを超えるか!?

日本ガイシ、中小型の蓄電池市場に名乗り
「亜鉛二次電池」はリチウムを超えるか!?

「亜鉛二次電池」の構造

 日本ガイシはリチウムイオン二次電池などよりも小型化が容易で低コストな「亜鉛二次電池」を開発した。電池の正・負極を隔てるセラミックス製のセパレーターを新たに開発。ショートを引き起こす課題があり実現が難しかったニッケルと亜鉛による二次電池の実用化に成功した。同社は大容量蓄電池のナトリウム硫黄(NAS)電池や燃料電池なども手がけており、蓄電池メーカーとしての存在感を高めつつある。

◆70年前から存在

 亜鉛二次電池は正極にニッケル、負極に亜鉛を使う二次電池。ニッケルと亜鉛による電池の原理自体は「約70年前から知られていた」(酒井均日本ガイシ執行役員)が、これまでは亜鉛の持っているある特性が壁となり、使い切りの一次電池にしか採用されなかった。

 その特性とは「デンドライト」(樹状析出)と呼ばれる亜鉛の成長だ。亜鉛などの金属は、充電すると樹氷のような形状に成長し、セパレーターを貫通して正極側まで突き出る。このため充電するとショートし、使えなくなる課題があった。

 同社の開発したセラミックス製のセパレーターは、正極側からの水酸化物イオンは通しつつ、負極側からのデンドライトは物理的に遮断。短絡問題が起きず、ニッケルと亜鉛の電池を充電可能な二次電池にすることに成功した。

◆水溶性で安全

 体積1リットル当たりのエネルギー密度は200ワット時と大型のリチウムイオン二次電池と同等以上を確保。電解液には水溶性の液体を使用するため、可燃性の液体を使うリチウムイオン二次電池より安全性が高い。リチウムでは複雑になっている制御回路が簡素になるため、同等の容量であれば2―3割の小型化が可能。さらには負極が亜鉛のためニッケル水素二次電池などよりも価格を抑えられるとみている。

 同社の亜鉛二次電池への期待は高い。「20年に売上高100億円を目指す」(酒井執行役員)とし、今後は耐久性や大型モジュール化などの社内試験を進める。主に容量数キロ―数百キロワット時のサイズを想定し、現在はリチウムイオン二次電池が広まりつつある中・小型電池の市場獲得をもくろむ。製品化は17年度を計画する。

◆国内外で実績

 日本ガイシは02年にNAS電池を実用化し、大型蓄電池の分野では国内外で納入の実績を積み重ねてきた。「蓄電池市場は原料メーカーなどとの競争が激しい分野」(酒井執行役員)だが、亜鉛二次電池の実用化によって、これから中・小型の蓄電池市場にも本格的に名乗りを上げることになる。

 新型二次電池を巡っては日立造船も16年度末までに円筒型二次電池「亜鉛空気電池」を製品化するという。成長市場を取り巻く開発競争は激しさを増している。
日刊工業新聞 2015年06月02日 電機・電子部品・情報・通信面記事を加筆修正
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
電池の原理は知られながら、実現してこなかったニッケルと亜鉛による蓄電池。事業化に期待がかかります。

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