“会話”を始めた部品たち~ 自立生産の障壁は従来の発想にしばられた人間だ!

連載バックナンバー「つながる工場(3)」July.2014

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ビッグデータを活用してFA機器の生産性向上に乗り出したオムロン(草津事業所)
 【模倣品を排除】
 全地球測位システム(GPS)とセンサーを使って建設機械の稼働を管理するコマツの代名詞「コムトラックス」。それを発展させた部品管理システムを2014年度に中国市場に投入する。これまで作業は把握していたが、部品の状態や交換時期などはつかみきれていなかった。狙いは氾濫する粗悪な模倣部品の徹底的な排除にある。

 建機の部品事業は新車に比べ利益率が高い。だが中国ではすぐに模倣部品が出回り、純正部品の比率は2割程度にとどまる。そこでフィルターなど補修部品の一つひとつに電子荷札を取り付けて追跡し、部品の交換履歴や純正品かどうかの確認を遠隔で一元管理できるようにする。

 ただ、これは一義的な目的。「部品の見える化」にはもっと先がある。将来は地面と接触して摩耗が激しい足回り部品にセンサーを取り付け、製品開発へのフィードバックも想定している。北秀孝常務執行役員は「どこまで機械に“しゃべらせる”ことができるか。それが我々が行動を起こすトリガー(引き金)になる」と話す。
 
 【超多品種少量】
 オムロンはビッグデータ(大量データ)を活用してFA機器の生産性向上に乗り出した。主力生産拠点の草津事業所(滋賀県草津市)の管理品目は4000にものぼる。そのうち7割が月産20台にも満たない“超多品種少量生産”。プリント基板実装ラインでは段取り替えが1日平均28回で、月に数回しかつくらないような製品に関するデータの解析は難しいのが実情だった。
 
 そこで加工機や検査機にセンサーを搭載。秒単位で稼働状況を把握し、分析する。「加工データと画像情報をひもづけすることで高い精度で不具合の原因を突き詰められる」(オートメーションシステム統轄事業部)。この実証実験で最大3割の生産改善を目指す。
 
 ドイツの「インダストリー4・0(第4次製造業革命)」で描く自律生産を「サイバー・フィジカル・システム(CPS)」と呼ぶ。部品や製造装置など生産プロセスのすべての要素にIPアドレスを割り当て、究極的には顧客のカスタム化された注文図面に基づいて一品生産できるようにすること。そのメーンストリームに自動車産業があるのは間違いない。
 
 【障壁は人】
 自動車の部材は3万点にもなるといわれ、年々増え続けている。だが、震災やリコールの対応を見ても完成車メーカーが部品のサプライチェーン管理(SCM)の情報を隅々まで追跡できているとはいえない。購買部門がサプライヤーの選定を行う「ソーシング」と、実際に調達業務を担当する「パーチェシング」の機能に分断されていることも障害になっている。

 「今後、ドイツのCPSでカギを握る存在はボッシュだろう」(国内半導体メーカー幹部)。巨大サプライヤーが音頭をとり、部品の標準化が進む可能性がある。経済産業省も汎用的な自動車部品について標準化の検討を始めてはいるが、「その障壁はテクノロジーより、従来の発想にとらわれている人にある」(坂口孝則未来調達研究所取締役)。

 米シスコシステムズの試算によると、IoT(モノのインターネット)の潜在利益は今後10年間で約400兆円であり、うちSCM改革は70兆円以上。「メイカーズ」の著書があるクリス・アンダーソン氏は「モノが必要に応じてつくられるようになれば、人件費は高くても機敏さにすぐれた先進国に製造業の“振り子”は戻る」と予見する。

日刊工業新聞2014年07月16日 1面

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア事業担当 DX統括

オムロンは国内外の自社工場をネットワークでつなぎ稼働状況などを共有するシステムの構築に乗り出した。草津事業所、中国上海市のFA機器工場などでの運用を視野に入れているという。追う立場はいろいろアグレッシブに挑戦できる。

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