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岩谷産業は水素ステーションのインフラ整備で先行者利益を得られるか

80億円投じ全国に15年度中に18カ所新設、燃料電池車の普及を後押し
岩谷産業は水素ステーションのインフラ整備で先行者利益を得られるか

岩谷産業が4月、東京港区に開設した水素ステーション

 岩谷産業は2016年3月期に81億円を投じ、燃料電池車(FCV)向け水素ステーションを18カ所建設する。計画が順調に進めば既設3カ所と合わせて、期末までに20カ所を掲げる整備目標を達成する見通しだ。

 水素ステーションの建設費は高い一方、現在のFCV販売台数では稼働率も低調が予想され、当面の収益は厳しい。水素供給事業者として、インフラ網の整備を先行して充実させることで、FCVの普及を促進する考えだ。

 岩谷産業の16年3月期設備投資計画は、前期実績比72億円増の260億円。今年を“水素(社会への)元年”と位置付け、水素ステーション関連の戦略的な先行投資で、設備投資額は例年に比べて大幅にふくらむ。

 期末までに、関東7カ所、中部4カ所、関西6カ所、中国・九州4カ所の計21カ所の水素ステーション設置を計画する。稼働中のステーションも含めて18カ所の整備に対し、すでに国の補助金交付が確定している。

 水素供給設備は現在、1カ所当たり3億―5億円とされ、メーカーはコストダウンに向けた技術開発を進めており、国も条件整備を検討している。設備には半額程度の補助金があるが、予定地は地価の高い都市部が中心で用地費用がかさむ。一部の自治体では公用地を提供する動きもある。
 
 岩谷産業が整備するのは、自社製造所から液化水素をタンクローリーで運ぶ“オフサイト”型ステーション。大阪市や福岡市の都心ではトレーラーによる移動式も計画する。またセブン―イレブン・ジャパンと共同でコンビニ併設型ステーションも東京都大田区、愛知県刈谷市の2カ所に設ける。
日刊工業新聞2015年06月01日 自動車面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
8年ほど前、ベルリンの公道でBMWの水素自動車を運転させてもらったことがある。すでに街中にはトタルのスタンドに水素ステーションが一部整備されていた。今後インフラのカギを握る存在の一つは、やはり石油会社やガソリンスタンド業界だろう。

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