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安倍首相の相談役、牛尾治朗氏が求める2つの“じりつ”

「これからの日本」~スローな民主主義に対しスピード感が増す市場経済の両立へ
 生涯追い続けているテーマがある。「民主主義と市場経済の両立」だ。スローな民主主義に対し、スピード感が増し、グローバル化が進む市場経済をいかに両立させるか―。この解は、日本のこれからのあるべき姿を映し出すはずだ。

 両者を両立させる条件は二つの「じりつ」だ。ひとつが、自らが独立の気概を持つ「自立」。もうひとつが自らを律する「自律」である。民主主義と市場経済の両立のためには、独立して自らの考えを持つ人間がどのくらい存在すればよいのか。しかし、自らの考えを明確にせず、他人任せの人間ばかりでは、民主主義は必ず崩壊してしまう。そうならないためにも、自分の考えでものを決められる「中核層」を育成する必要性がより高まっている。

 戦後、わが国は民主主義と市場経済を上手に具現化してきた。東西冷戦下、西側陣営は日本の繁栄を世界にアピールする「ショールーム」に位置づけ、共産主義陣営をけん制したが、東西冷戦が終焉(しゅうえん)し、世界が一体化した現在、日本が先進国としてどのようなプレゼンスを発揮できるかが焦点になる。いま一度、民主主義のあり方を問い直す時期を迎えたと言えよう。

 【納税者が主導】
 民主主義は、税金を納める「タックスペイヤー(tax payer)」が主導するのが本来の姿である。絶対的な権力を持った王政では独裁になってしまう懸念がある。タックスペイヤー・デモクラシーこそが民主主義の起源だ。しかし、今の日本を俯瞰(ふかん)すると、人口減少や少子高齢化時代に突入したことで、タックスペイヤーがどんどん減り、「タックスイーター(tax eater)」が増えてしまっている。こんな状況が続けば、将来の日本が破滅するのは火を見るより明らかだ。

 独裁政権に対抗する民主主義は、タックスペイヤーが主導するべきである。そのためには、年齢・性別・人種を問わず、いつまでも、誰でも働くことができる社会構造に転換することが必要だ。まずは「定年」という概念をなくし、タックスイーターをタックスペイヤーに変えていくことが喫緊の課題である。また、女性の活躍推進も同時に進め、女性管理職を増やしていくほか、外国人の活用も前向きに検討しなければならない。「ジェンダー」という言葉が持つ意味合いがより重くなるだろう。

 【次の世代に投資】
 「成長がすべてを癒やす」と言われていた時代がある。高度成長期であれば成長が課題を解決してくれたが、公債残高が対GDP比で200%超という危機的な財政状況の日本において、成長をよりどころにすることはできない。1960年代から80年代の輝かしい経済成長に寄りかかり、過去の考え方や生き方、働き方のままに、将来を描こうとする思考は「余剰幻想」である。余剰幻想から脱却し、「次の世代に投資する社会」へと転換することが重要だ。その先には、民主主義と市場経済の両立が実現する世界が待っている。

 牛尾治朗(うしお・じろう)1953年東大法卒、同年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。カリフォルニア大学バークレー校大学院留学を経て、64年ウシオ電機を設立。69年に日本青年会議所会頭。95年経済同友会代表幹事に就任。2000年DDI(現KDDI)会長、01年経済財政諮問会議民間議員、03年社会経済生産性本部(現日本生産性本部)会長に就くなど、財界の中核の地位を不動にする。現在は日本アカデメイア共同塾頭として「政財界のご意見番」に。兵庫県出身、84歳。
2日刊工業新聞社015年05月27日1面『広角』
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
今日1日にたまたま「国富論」で有名な原丈二氏が中心となった「『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアチブ」のキックオフイベントがある。以前、ある雑誌で牛尾さんと原さんが公益資本主義について対談していた。行き過ぎた金融主義の是正を目指す方向性は同じでも、各論ではかなり違っていた印象だった。各論こそ政策なのだが、、

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