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東芝のメモリー事業、完全売却に現実味。一体いくらになるの?

WHの破産処理コストを捻出。1.5兆円が妥当な線か
東芝のメモリー事業、完全売却に現実味。一体いくらになるの?

東芝製フラッシュメモリー

 東芝が、半導体メモリー事業を分社して設立する新会社の株式の完全売却に踏み込む可能性が高まってきた。新会社の評価額が期待より上がらない懸念がある一方で、米原子力発電事業子会社ウエスチングハウス(WH)の破産処理コストを捻出するという新たな役割への重みが増しているからだ。

 東芝が4月1日付けで運営を始めるメモリー新会社「東芝メモリ」。その価値はいくらなのか。市場関係者の間では「2兆円は下らない」との指摘が多い。米ウエスタンデジタル(WD)が、2兆円規模を投じてメモリー大手の米サンディスクを買収したことが根拠の一つだ。

 「2兆円の値が付いたらとんでもなくラッキー」。一方、東芝幹部は慎重にそろばんをはじく。メモリー新会社の株式を売却するための入札には、複数のファンドが興味を示している。

 ファンドは新会社を上場させてキャピタルゲイン(資産売却益)を得る考えで、東芝幹部は「利ざやを大きくするため入札時にはディスカウントしてくるだろう」と話す。こうしたことから業界関係者は新会社の価値は「1兆5000億円という線が妥当ではないか」とみる。

 東芝はメモリー新会社の株式を売却し、1兆円規模の資金調達を目指す計画。入札では100%売却を前提条件としているが、株式の保有を継続し一定の関与を残す方針も否定していない。

 しかしWHの破産法11条適用や、債務保証リスクを考慮すれば、資金は多いほうが良い。東芝の社外取締役は「WHを破産処理して泥沼から抜け出さないといけない。そのためメモリー新会社を完全売却し、最悪に備えるべきだ」と強調する。
(文=後藤信之)
日刊工業新聞2017年3月13日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
メモリー新会社をめぐっては、東芝の関与継続を望む声が社内外で少なくない。半導体装置メーカー幹部は「東芝の関与がなくなり、外資系になると人材流出が加速するのではないか」と懸念を示す。入札に応募する日本企業は今のところ見当たらない。東芝から完全にメモリーがなくなり、半導体メモリーを手がける日本企業が消滅する事態が迫っている。

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