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欧州の省エネ政策で今、イタリアが注目されるワケ

電気・ガスの削減量を売買、資金が投資に回る仕組みに
欧州の省エネ政策で今、イタリアが注目されるワケ

ローマのコロッセオ

 住環境計画研究所(東京都千代田区、中上英俊会長)が実施した欧州の省エネルギー政策に関する現地調査によると、省エネの成果である電気・ガスの削減量の取引が重要な推進手段となっていることが分かった。イタリアでは電気・ガスの削減量を売買し、資金が省エネ投資に回る仕組みがある。調査を指揮した中上会長は、「自発的に省エネが進むスキーム」と分析。「日本にも当てはめられる」と指摘する。

 イタリアのエネルギー供給事業者は、電気やガスの販売量を減らすことが義務付けられている。達成には家庭やビル、工場など需要家の省エネ対策が必要。販売量が減ると困るはずのエネルギー事業者側から需要家の省エネ投資を促す制度がイタリアで機能している。

 まず、エネルギー事業者は法制度により、需要家の省エネ投資の資金を電気・ガス代に上乗せできるようになっている。エネルギー事業者が需要家の省エネ改修費用を負担しても、電気・ガス代で回収が可能だ。

 この仕組みは、太陽光や風力といった再生可能エネルギーで作った電気を電力会社が買い取る場合、その費用を需要家が負担する仕組みに近く、全国民が省エネを支える。すべての需要家に上乗せされるので省エネ投資をしないと損になる。

 省エネの成果である電気やガスの削減量を「証書」にして取引できる制度(省エネ証書取引)も、省エネを促す。エネルギー事業者は購入した証書を、電気やガスの販売量の削減義務達成に使える。

 イタリアの省エネ証書取引に参加する1200事業者のうち、80%は省エネルギーサービス事業者(ESCO)という。そのESCOが、需要家の省エネ改修事業を担っている。エネルギー事業者がESCOに支払った証書の購入費が、需要家の省エネ投資の費用となる。中上会長は「証書が大きなツールになっている」と分析する。

 フランスにも似た制度がある。欧州連合(EU)はエネルギー効率化指令を加盟国に出している。二酸化炭素(CO2)排出量削減の高い目標も掲げており、「制度がEU加盟国に広がってもおかしくない」と話す。

 日本政府は2030年までに、ビルなどの業務部門、家庭部門とも13年比で約4割のCO2排出削減を目指す。日本の省エネ投資は補助金頼みだが、“イタリア型”の仕組みも参考になりそうだ。また、16年4月の電力小売り全面自由化後、電力会社には顧客サービスの充実が求められている。中上会長は「省エネサービスは、価格以外の差別化になる」と指摘する。
                 

(文=松木喬)
日刊工業新聞2017年3月9日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
日本の省エネが進めば海外から購入するガス・石油・石炭が減るので、エネルギ安全保障につながります。なのでイタリアのように省エネ投資の原資が電気代に上乗せされたとしても、価値があります。政府は、原発事故の処理費を電気代に上乗せしようと検討しています。同じ国民負担なら、どちらの負担に価値がありますか。

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