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ドイツや中国メーカーに負けない日系化学大手の稼ぎ方とは?

自動車向け新素材で採用広がる。防カビ成分の弾性樹脂や炭素繊維にしみ込む材料で軽量化
 総合化学大手各社が自動車の生産効率化につながる新素材の開発を加速している。住友化学はカビの発生を抑えるエラストマー(弾性樹脂)を開発した。三菱ケミカルホールディングス(HD)の溶けた樹脂の合流線が製品表面に発生しにくい高機能ポリプロピレン(PP)は、ダイハツ工業に採用された。中国メーカーの供給過剰で基礎化学品の採算悪化が長期化する中、各社は高い技術が求められる自動車部品向け高機能樹脂を、主力の収益源に育て活路とする戦略だ。

 住友化学の開発品は防カビ成分がエラストマー内側から表面に少しずつしみ出す仕組み。車載用エアコン部材など湿気の多い場所や水にぬれる場所の部材に用いても防カビ成分が長期間続く。

 同社は明るさが1平方メートル当たり1万カンデラを実現した有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)照明パネルを使った自動車用ブレーキランプも開発した。発光面の厚さが1・2ミリメートルと薄いため、軽量化に貢献し、デザインの自由度も増す。

 三菱ケミ傘下の日本ポリプロが開発したメタロセン系PP「ウィンテック」はダイハツ工業のドア化粧パネル(ガーニッシュ)に採用された。高性能軟質PP「ウェルネクス」も河西工業がドアグリップに採用した。塗装工程が不要で、歩留まりを向上できる。

 三井化学は熱硬化性の不飽和ポリエステル樹脂に添加材を混ぜた樹脂を炭素繊維にしみ込ませシート状にした成形材料を開発、トヨタ自動車の高級スポーツクーペ「レクサスRCF」のボンネット内側パネルに採用された。アルミニウム製より約3割軽量化できる。

 一方、ドイツの総合化学大手BASFは米フォードモーターなどと連携し、炭素長繊維とポリアミドの複合材でフロントエンジンカバーなどを開発、アルミ鋳物製に比べエンジン1基当たり1・8キログラム軽量化させた。

 欧米化学大手との競争に勝つためにも社内の技術融合による開発促進、ユーザーの視点に立ったマーケットイン型複合提案体制が求められそうだ。
日刊工業新聞2015年05月27日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大手化学にとってここ数年、非石化事業の強化が課題。排ガス触媒などの高機能材料をはじめとした機能商品事業が収益源になり始めている。一方でBASFの日本法人が横浜に顧客支援の開発拠点を設けたり、戸田工業と自動車向け電池などの材料部品で合弁を設立するなど、日本勢も気が抜けない。

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