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水素燃料車両を開発、駅の電力も水素で発電

JR東日本、再生エネルギー活用を加速
 JR東日本が2017年春、太陽光を利用した水素発電システムを駅に導入するなど、水素の活用を進めている。2020年以降の運行を視野に、水素を燃料とする車両の技術を開発する。JR東日本は、30年度に鉄道エネルギー使用量を13年度比で25%、二酸化炭素(CO2)排出量は40%のそれぞれ削減を目指している。省エネルギーや環境負荷低減を目的に、再生可能エネルギー関連技術の開発を加速し、実用化につなげる。

 JR東日本が導入する水素発電システムは、東芝の「H2One」。太陽光発電で作った電気で水電解装置を動かし、水素を取り出して水素貯蔵タンクに貯蔵。その水素を使って燃料電池で発電し、駅舎の電源の一部として利用する。再生可能エネルギーを利用して水素を取り出し、発電するため、CO2排出はゼロとなる。

 H2Oneを設置するのは、南武線武蔵溝ノ口駅(川崎市高津区)で、政府も進める水素社会の実現に向けた「エコステ」のモデル駅とする。JR東日本は川崎市と、水素エネルギーの活用で協定を結んでいる。災害時にライフラインが寸断された場合、同駅を一時滞在場所とすることも想定している。

 このほか、JR東日本はCO2の排出がゼロとなる車両を、ローカル線に多い非電化区間へ導入することを想定し、水素を燃料とする車両の開発を進めている。現状、非電化区間の多くはディーゼル車両で運行しているが、排ガスやCO2が課題となっている。JR東日本は非電化区間でも電気で走行できる蓄電池車両を開発し、栃木県の烏山線や秋田県の男鹿線などで運行。並行して、電車運行における水素の活用の可能性を検討する。

 水素を燃料とする車両は、フランスのアルストムが開発に成功し実用化にこぎ着けており、18年にもドイツで運行が始まる。JR東日本は今後、技術的な課題を検討し、メーカーや地方自治体などとも連携しながら、車両の開発を目指す。

 政府は水素を次世代のエネルギーと位置づけ、水素社会の実現を目指す。世界最大規模の水素製造拠点の建設や、水素ステーションの整備を検討している。また、東京海洋大学などが20年の実用化に向けて、水素の燃料電池船を開発。鉄道においてもJR東日本を中心に、水素の活用を前提とした研究開発が進む。
日刊工業新聞2017年03月07日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
JR東日本は11月に技術革新中長期ビジョンを策定し、中長期の技術開発のテーマや方向性を示しています。ただ、いずれも開発の時間的な目標は明確にしておらず、いつ何ができるようになるかがわかりません。冨田哲郎社長もその点は課題と感じているようで、インタビューで、タイムスケジュールを定めたいと話していました。

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