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黒岩神奈川県知事が火山対応で期待する「ロボット産業特区」の実行力

「さがみ」ではすでに災害対策ロボを商品化。今後はドローンも活用し温泉供給地の清掃対策も
黒岩神奈川県知事が火山対応で期待する「ロボット産業特区」の実行力

火山活動対応ロボット緊急開発プロジェクトチームの第1回会合

 神奈川県は28日、小田原市の神奈川県産業技術センター工芸技術所で「火山活動対応ロボット緊急開発プロジェクトチーム」の第1回会合を開いた。箱根山大涌谷周辺で火山活動が続くなか、施設のメンテナンスや各種調査にロボットの活用を模索する。初会合では開発するロボットの検討を始めるために大涌谷周辺の問題点の整理が必要とし、飛行ロボット(ドローン)を飛ばすことで一致した。

 火山対応ロボットの緊急開発に関する会合は、「人的被害ゼロ」を目指す取り組みの一環。例えば、温泉を供給する箱根温泉供給(神奈川県箱根町)では、送湯管内部が硫黄などの「スケール」で詰まるため定期的な清掃が必要。同管は立ち入り禁止地区内にあり、ロボットの活用が期待される。プロジェクトチームでは中・長期を見据え、ロボットに対応した温泉供給システムの構築も検討していく。

 会合に参加した黒岩祐治神奈川県知事は、県内の「さがみロボット産業特区」を活用していく方針で、「温泉供給の問題など早急に取り組む課題がある。大涌谷周辺にロボットの技術をどう活用するか知恵を絞りたい」と話した。

 【関連記事=コーワテックが災害対策ロボ商品化】

 コーワテック(東京都港区)は、神奈川県が「さがみロボット産業特区」で支援してきた災害対応ロボットを商品化、販売を始めた。参考価格は600万円程度(消費税、諸経費別)でリースも可。当面は受注生産で対応する。

 商品化したのは人工筋肉による遠隔建機操縦ロボット「アクティブロボSAM」。建機の運転席に搭載し、空気圧で収縮する人工筋肉で駆動、無線遠隔操縦ができる。また、車載カメラと動画像伝送装置で室内からの操縦も可能。人工筋肉は衝撃性・振動性・防じん性を持ち、厳しい現場作業に強い。建機から離れた場所で操縦できるため、災害場所など人が近づけない危険な場所や悪環境下の場所でも、建機を運用できる。

 ロボットの全体重量は約50キログラムで、搭載から稼働まで約30分で可能。駆動は搭載建機のバッテリー電源を使用。どのメーカーの建機でも使用できる汎用性を持つ。

 同ロボットは2014年3月の地域協議会で神奈川県寒川町から紹介を受け、プレ実証フィールドでの動作確認、公募型「ロボット実証支援事業」などを通して同社湘南事業所(神奈川県寒川町)で1年間で商品化した。同産業特区では2件目の商品化。
日刊工業新聞2015年05月08日/29日 列島ネット面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
全国で火山活動が活発化する中で、ロボットの活用はまさに喫緊の課題。特に神奈川県はかなり前から産官学でロボットの研究開発、実用化が進んでおり、全国のモデルケースになる。

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