ニコン「DLシリーズ」発売中止は英断か。名門復活へ大ナタ
「商品化プロセスを抜本的に見直す。近道はない」
カメラ業界2位のニコンが、復権に向けて身を切る姿勢で挑んでいる。1000人超の人員削減に続き、ユーザーの期待が大きかった高級コンパクトカメラの発売を断念した。足元の業績は堅調だが、主に薄型ディスプレー(FPD)露光装置に支えられたもので、数年先は心もとない。売上高の大半を占めるカメラ事業の立て直しが急務だ。
「DLを買いたかったんだけどな」。都内に勤める50代の男性は、残念そうにつぶやいた。ニコンが発売中止を決めた「DLシリーズ」などの高級コンパクトカメラは、縮小するカメラ市場の中で安定した人気があり、単価も高い。
「英断だ」(カメラ大手役員)という声がある一方、ニコンの強みを発揮すべき分野であるため、「発売中止は理解に苦しむ」(国内証券シニアアナリスト)と厳しい声も上がる。DLは2016年6月発売予定だったが、画像処理用の集積回路に不具合があり発売を延期していた。「販売店も、ほぼ準備を終えていたのでは」(別の競合メーカー幹部)と見られている。
市場とニコンの乖離(かいり)は他にもある。拡大しているミラーレスカメラ市場に十分に商品を出せていない。360度を撮影するアクションカメラはスマートフォンとの接続性で評判が悪く、計画の半分にも届いていない。
カメラなどの映像事業は同社の売上高の半分以上を占め、ブランドをけん引してきた。期待を裏切る負の連鎖を早く断ち切らなければいけない。
映像事業を担当する御給伸好常務執行役員は、「発売中止には責任を感じる。しかし、やむを得なかった」と険しい表情で語る。もし、商品を出して期待を下回れば、ユーザーを裏切ることになる。苦渋の決断だった。
映像事業において、取るべき戦略はシンプルだ。御給常務執行役員は、「基本性能や質感がしっかりした『ニコンだな』と思ってもらえるものを出す」と話す。ブランド力を生かせる中・高級一眼レフや交換用レンズ、ミラーレスカメラを強化する。ミラーレスは早期に品ぞろえを増やす。DLのような高級コンパクトも将来の可能性を残すが、「慎重に判断する」(御給常務執行役員)という。
課題は、DLやアクションカメラで起きた開発遅れにつながるリソースの配分ミスや、ユーザーが求める条件とのずれをなくすことだ。「商品化プロセスを抜本的に見直す。近道はない」(同)。ただ、ガジェット系製品は効率化だけでは立て直せない。ヒットを生むため、おもしろい商品を多く生み出す工夫が求められる。
「DLを買いたかったんだけどな」。都内に勤める50代の男性は、残念そうにつぶやいた。ニコンが発売中止を決めた「DLシリーズ」などの高級コンパクトカメラは、縮小するカメラ市場の中で安定した人気があり、単価も高い。
「英断だ」(カメラ大手役員)という声がある一方、ニコンの強みを発揮すべき分野であるため、「発売中止は理解に苦しむ」(国内証券シニアアナリスト)と厳しい声も上がる。DLは2016年6月発売予定だったが、画像処理用の集積回路に不具合があり発売を延期していた。「販売店も、ほぼ準備を終えていたのでは」(別の競合メーカー幹部)と見られている。
市場とニコンの乖離(かいり)は他にもある。拡大しているミラーレスカメラ市場に十分に商品を出せていない。360度を撮影するアクションカメラはスマートフォンとの接続性で評判が悪く、計画の半分にも届いていない。
カメラなどの映像事業は同社の売上高の半分以上を占め、ブランドをけん引してきた。期待を裏切る負の連鎖を早く断ち切らなければいけない。
映像事業を担当する御給伸好常務執行役員は、「発売中止には責任を感じる。しかし、やむを得なかった」と険しい表情で語る。もし、商品を出して期待を下回れば、ユーザーを裏切ることになる。苦渋の決断だった。
映像事業において、取るべき戦略はシンプルだ。御給常務執行役員は、「基本性能や質感がしっかりした『ニコンだな』と思ってもらえるものを出す」と話す。ブランド力を生かせる中・高級一眼レフや交換用レンズ、ミラーレスカメラを強化する。ミラーレスは早期に品ぞろえを増やす。DLのような高級コンパクトも将来の可能性を残すが、「慎重に判断する」(御給常務執行役員)という。
課題は、DLやアクションカメラで起きた開発遅れにつながるリソースの配分ミスや、ユーザーが求める条件とのずれをなくすことだ。「商品化プロセスを抜本的に見直す。近道はない」(同)。ただ、ガジェット系製品は効率化だけでは立て直せない。ヒットを生むため、おもしろい商品を多く生み出す工夫が求められる。
日刊工業新聞2017年2月27日