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昭和シェル社長「出光との統合、2年も3年も延期するつもりはない」

亀岡剛社長インタビュー「業務提携を考えている場合ではない」
 出光興産の創業家による反対に遭い、4月を予定していた合併の無期限延期という苦渋の決断をした出光と昭和シェル石油。合併への道筋が依然、見通せない中で4月に経営統合するJXホールディングス(HD)・東燃ゼネラル石油連合にどう対抗するのか。昭和シェルの亀岡剛社長に今後のかじ取りを聞いた。この中で亀岡社長は、ガソリン需要の先細りなど厳しい環境変化を踏まえ、系列給油所(SS)のサービス力の底上げに力を入れる考えを示した。

 ―出光興産との合併に先立ち、業務提携などで協力を深める考えはありますか。
 「石油精製・元売り業界では、部長クラスで決済するケースを含め、いろいろなレベルで各方面と提携している。製品の融通や配送網の乗り入れなどは珍しくない。このような協力は当然続ける。今年は両社とも、製油所の定期修理を控えている。この間、半製品の融通はやるだろう」

 「だが提携だと、どちらか一方の財布だけが痛むようなことをするわけにいかない。我々はそうしたレベルを超えて経営統合に踏み込み、財布を一つにしようと決めた。経営レベルで取り組むべきことは提携でなく、あくまでも統合だ。統合を2年も3年も延期するつもりはない。大がかりな業務提携を考えている場合ではない」

 ―合併延期について特約店・代理店にどう説明していますか。
 「この間に『統合は必ず実現します。それより、ガソリンなどの需要が減る中で、皆さんの事業をさらに強くするために何をするべきかを一緒に考えましょう』と説いて回り、各社の賛同を得た。特約店・代理店も(4月に経営統合する)JXHD・東燃ゼネラル連合にどう対抗していくかを冷静に考えている」

 ―SSの収益向上にどう取り組みますか。
 「低燃費車の普及で顧客の来店頻度が下がっているほか、自動車の構造が複雑になるにつれ、高度な技術力が求められるようになった。また、SSの閉鎖が相次ぐ中で残ったSSの商圏が広くなり、客層が広域にまたがっている」

 「こうした状況を踏まえれば、顧客との接点を従来以上に大切にする必要がある。顧客一人ひとりに特化したワン・ツー・ワンのサービスを実践できるように、人材教育プログラムを充実させる。この一環として、SS従業員の力量を高めてもらうためのeラーニングシステムを導入した」

 ―ハイブリッド車(HV)が一般的になるなど、自動車の技術革新が急速です。
 「自動車の高機能化に対応するための技能向上にも取り組む。SSの従業員を対象とした技能認定制度を見直し、技術革新への対応を急ぎたい」
(聞き手=宇田川智大)
日刊工業新聞2017年2月23日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ガソリン販売で5割のシェアを握るJX・東燃ゼネラル連合への警戒感が、昭和シェル系列の特約店・代理店やSSでも強まっているようだ。出光興産との合併の時期を見通せない中で、ガソリン需要の減退など構造的な環境変化への対応を迫られている。SSの収益基盤強化は、待ったなしの課題となる。 (日刊工業新聞第ニ産業部・宇田川智大)

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