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トヨタ起点に「低酸素水素」のサプライチェーン構築

愛知県や中電などと連携。製造から利用までのCO2排出抑える
トヨタ起点に「低酸素水素」のサプライチェーン構築

FCV「ミライ」生産工場のFCVフォークリフトを導入しているトヨタ

 トヨタ自動車は愛知県などと、製造過程で二酸化炭素(CO2)をほぼ出さない「低炭素水素」の供給網構築で連携する。再生可能エネルギー由来の電気やガスを既存の電力網・導管で運び、工場など利用場所の近くで水素をつくることで、水素の製造から利用までのCO2排出を極力抑える。走行時にCO2を出さない燃料電池車(FCV)に加え、その燃料となる水素の製造段階でもCO2の排出を減らし、低炭素社会の実現を急ぐ。

 水素はガス改質や水の電気分解でつくる。低炭素社会の実現にはガスや電気の製造過程でのCO2排出削減が課題だ。現状では水素の輸送段階でも車両から排ガスが出る。

 トヨタなどはゴミ焼却時に出る蒸気で発電する「ゴミ発電」や、下水処理で発生するメタンガスなど廃棄物由来の再生可能エネルギーを活用する。

 再生エネでつくった電気やガスを既存の電線や都市ガス導管に通し、水素利用場所に送る仕組みを構築。CO2削減だけでなく、水素輸送費の低減も目指す。

 愛知県が調整役となり、ゴミ処理施設のある豊田市、下水処理場を持つ知多市、電力・ガス網を有する中部電力、東邦ガスなどと連携。このモデルを「あいち低炭素水素サプライチェーン」として、低炭素水素を公的に認証する制度を検討する。トヨタは工場内に自前の水素製造設備の建設を検討する。

 2014年にFCV「ミライ」を発売したトヨタは関連技術の普及を急ぐ。17年1月には世界の運輸・エネルギー大手など13社で水素利用の推進団体も設立した。

 市場動向をみながら量産型のEVも開発しているが、FCVを引き続き「究極のエコカー」と位置付け、インフラ全体でのコスト削減を進める。既に神奈川県などとも低炭素水素の実証を進めている。
               

記者ファシリテーター


 自治体と一緒なので、本番さながらの社会実験ができるんだと思います。トヨタの工場だけでなく、FCタクシー、FCバス、ビル(燃料電池)などとも一緒にやってほしいです。あと貯蔵も。それと都市ガス導管の活用は都市ガスにバイオガスを混ぜて運ぶのか(神戸市のように)、気になるところです。
(日刊工業新聞第ニ産業部・松木喬)
日刊工業新聞2017年2月24日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
水素エネルギーの利用には種々の課題が存在する。まず水素製造に必要なエネルギーはCO2排出を伴わない電気やガスの利用でなければ意味がない。水素の貯蔵や運搬方法に関しても他の原料よりもインフラ整備にコストがかかり且つ管理が難しいという面は否定できない。これらの課題に関して、今回、トヨタは、再生可能エネルギーによる電力を活用、工場など利用場所の近くで水素を作ることでクリアしようとしている。工場内に自前の水素製造設備を建設し、水素社会の実現に向けて“課題”の解決策を検討してほしい。

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